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コラム 記者ワープロ

日日草

(10/29)

 漂いながらも異彩を放つ人がいる。肉体も精神も同じ場所にとどまらず、常に旅をする「遊民」とでもいおうか。俳聖・松尾芭蕉などはその典型であろう

▼海外に目を向ければ、「文学を横切った詩人」といわれるアルチュール・ランボーも同種の一人か。そのランボーに傾倒したというミュージシャンのボブ・ディランが2016年ノーベル文学賞を受賞し、世界を驚かせた

▼が、受賞後のお膳立てが約束の同賞にあって、本人への連絡がつかず音信不通とのニュースが飛び交っている。世に名声を博す一方で世俗を離れた孤高の魂が、遊民たるディランを強く印象付けているようにも見える

▼その名を意識したのは、GAROが1972年に歌ってヒットした「学生街の喫茶店」の中の「学生でにぎやかなこの店の 片隅で聴いていたボブ・ディラン」というフレーズ。それから追体験が始まるのだが、3コードの曲調や吟遊詩人的なパフォーマンスに目が行き、詩的な部分には関心を持っていなかったのが正直なところだ

▼ベトナム反戦という観念が先行するディランの歌だが、数々の作品の中にはそれだけではない文学表現がちりばめられているのだろう。米国音楽の中に新しい詩の表現を創造したとの受賞理由に、改めて興味をかき立てられる思いだ

▼「学生街-」は「あの時の歌は聴こえない 人の姿も変わったよ 時は流れた」と韻を踏んで続く。その時は流れ、昇華した詩人の才能は、本人の意思とは別に祝福の極みに浴する。大きな余韻の中で、あの時の歌が世界中に流れ、新たなファンをもつかんでいくことだろう。