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コラム 記者ワープロ

日日草

(12/3)

 「陸羽132号」を知っている人も多いだろう。人工交配品種の先駆けとされ、1921(大正10)年に秋田の農事試験場陸羽支場で育成された水稲の品種だ。冷害に強く、県内では昭和30年代まで作付面積のトップを誇った。食味に優れた品種に押され栽培されなくなったが、縁あって食す機会があった。かむごとに甘みが広がる懐かしい味がした

▼「陸羽132号」が真価を発揮したのは、昭和初期に続いた大冷害の時。宮沢賢治はこの冷害を記した「稲作挿話」の中で、「陸羽一三二のはうね/あれはずゐぶん上手に行った/肥えも少しもむらがないし/いかにも強く育ってゐる」と述べている。冷害に悩まされてきた東北の農民の大きな希望でもあった

▼一関市藤沢町で今年、この「陸羽132号」が栽培された。きっかけは男性(81)がつぶやいた「もう一度食べてみたい」の一言。これを聞いた地元の住職が手を尽くし、奈良県に種もみがあるのを探し出した

▼取り寄せた種もみを育苗し、住職らが企画するイベントで、子供たちが苗を植え、稲を刈り取った。収穫したコメは地区の寺と神社に奉納され、関係者が食す会を催した

▼60年ぶりに口にした男性は「味より収穫量が重視された時代だったが、『陸羽132号』は冷害に強く味も良かった。確かにこんな味」と懐かしんだ

▼県内では水稲の新品種が相次いで誕生している。今秋デビューした「銀河のしずく」は来年、栽培面積を大きく増やす計画という。「陸羽132号」が先鞭(せんべん)をつけた人工交配技術が今に受け継がれ、おいしいお米の誕生につながっている。