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2017年4月
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コラム 記者ワープロ

日日草

(4/5)

 夏空の下の元気な子供たち、枯れ葉舞う中の哀愁を帯びた中年男性…。ブランコにはそんなイメージがあるが、実は春の季語である。新学期が始まり、冬場、所在なげに揺れていた校庭のブランコも子供たちの歓声に包まれることだろう

▼漢詩に「春夜」(蘇軾(そしょく))という名作がある。「春宵一刻直(あたい)千金/花有清香月有陰/歌管楼臺聲細細/鞦韆(しゅうせん)院落夜沈沈」。情緒豊かな春の夜を詠んだものだが、「鞦韆」はブランコのことだ

▼春の夜のひとときは千金にも値する。花は清らかに香り月がおぼろにかすんでいる。歌や楽器の音がやみ人々の声も小さい。庭のブランコも揺れることなく夜は静かに更けていく。ブランコが春の季語になったのもうなずける

▼ブランコは人の心情を表す小道具として映画やテレビ番組、文学作品などで効果的に使われている。出色は何といっても黒澤明監督の「生きる」(1952年、東宝)であろう。志村喬演じる主人公とブランコが一体化したシーンは作品のテーマである「生と死」を描き切った

▼69年にはビリーバンバンの「白いブランコ」がヒット。テレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」(74年)のオープニングではハイジが雄大な山脈を背景に元気よくブランコをこいでいた。詩人中原中也(1907~37年)の「サーカス」は空中ブランコを「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」と表現した

▼時々ブランコに乗りたくなることがある。木につり下げた手作りのブランコで遊んだ幼い頃の記憶が残っているばかりではなく、単純な構造の中に老若男女を魅了する何かがブランコにはあるようだ。