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コラム 記者ワープロ

日日草

(5/10)

 5月10日は、「暮らしの歳時記」で折々に作品を紹介している俳人山口青邨の誕生日である。青邨は1892年、盛岡市生まれ。東京帝国大工科大学(現東大工学部)に学び古河鉱業、農商務省技師を経て同大教授となる

▼この間、高浜虚子に師事し、水原秋桜子らの東大俳句会に参加。1934年に第一句集「雑草園」を刊行。生涯に13の句集と8冊の随筆集などを著し、88年に96歳で亡くなった

▼科学者らしい観察眼、平易で高雅な秀句を数多く生み出した。没後、遺族から所蔵図書や遺愛品が北上市の日本現代詩歌文学館に寄贈された。青邨が39歳の時に東京都杉並区内に移り住み生涯を過ごした三艸(さんそう)書屋(雑草園)が94年に同館前に移築復元され、公開されている

▼室内には「雨どどと白し菖蒲の花びらに」「蟷螂(とうろう)の反りかへり見る冬近き」「お備餅の上の橙いつも危し」などの短冊が掲げられている。和室は7部屋あり、どこからも「私の只一つの贅沢」と語った庭が望める

▼「雨が降る、しとしとしとしとと降る。表も、裏も濡れた新緑である、楓は枝を、葉を層々相重ね…、椿の葉も八つ手の葉も、何も彼にもが濡れて輝いてゐる。…僕は縁側に立つて、足が少し冷たくなつているのを感じながら、じつと庭の面を眺めてゐた」(随想「雨」より)。随筆も名文だ

▼筆者も先月下旬に訪れたが、具合よく小雨で、花々はしっとりぬれて輝き、若葉も葉先に滴をたたえていた。詩情は湧くが悲しいかな、言葉が出てこない。結びも青邨を鑑賞…。「雨降れば甍(いらか)水たたえ春は逝く」「花咲かぬ藤の若葉の書斎かな」