コラム
(02/02)
「直ちに人体に影響を及ぼすような数値ではない」。東京電力福島第1原発事故を受け、2011年3月16日に当時の枝野幸男官房長官が会見で述べた言葉だ。放射性物質への理解が進んだ今となっては、この発言のポイントが「直ちに」にあることは明白だろう
▼この言い回しは、その後繰り返し使われた。確かに、うそはついていないのだが、問題をできるだけ小さく表現しようとする姿勢が国民の不信感を増し、対応の遅れをはじめさまざまな問題を広げたという点において、罪は重い
▼12月16日に野田佳彦首相は「冷温停止状態」を宣言。冷温停止ではなく、冷温停止状態と「逃げを打った」ことを、不信感たっぷりの国民が気付かないわけがない。政治はどこを向いて行われているのか
▼炉心溶融した核燃料の状態が分からない以上、津波で電源が失われたことが事故原因なのかも確かめようがない。巨大地震が起きた段階で燃料棒は落下していた、という説さえある。津波対策だけに問題を矮小(わいしょう)化するのは早計だろう
▼それでも政府は1月17日、原子炉等規制法改正案の骨子を発表し、原発の運転期間を原則40年とし、「要件を満たせば」さらに20年運転可能とした。最長で60年。国は原発を減らす考えなど毛頭ない、と宣言したに等しい
▼使用済み核燃料の処理の見通しがまるで立たない現状から、いつまで目をそらし続けるつもりなのか。小手先の話術を駆使して問題を先送りにするだけの政権なら「直ちに」お引き取り願いたい、と考える国民は増え続けているのではないだろうか。
▼この言い回しは、その後繰り返し使われた。確かに、うそはついていないのだが、問題をできるだけ小さく表現しようとする姿勢が国民の不信感を増し、対応の遅れをはじめさまざまな問題を広げたという点において、罪は重い
▼12月16日に野田佳彦首相は「冷温停止状態」を宣言。冷温停止ではなく、冷温停止状態と「逃げを打った」ことを、不信感たっぷりの国民が気付かないわけがない。政治はどこを向いて行われているのか
▼炉心溶融した核燃料の状態が分からない以上、津波で電源が失われたことが事故原因なのかも確かめようがない。巨大地震が起きた段階で燃料棒は落下していた、という説さえある。津波対策だけに問題を矮小(わいしょう)化するのは早計だろう
▼それでも政府は1月17日、原子炉等規制法改正案の骨子を発表し、原発の運転期間を原則40年とし、「要件を満たせば」さらに20年運転可能とした。最長で60年。国は原発を減らす考えなど毛頭ない、と宣言したに等しい
▼使用済み核燃料の処理の見通しがまるで立たない現状から、いつまで目をそらし続けるつもりなのか。小手先の話術を駆使して問題を先送りにするだけの政権なら「直ちに」お引き取り願いたい、と考える国民は増え続けているのではないだろうか。
コラム
(02/01)
古来より、わが国を代表する桜の名所を指して「西の吉野、東の桜川」と並び称された。中でも奈良県の吉野山といえば、都人が憧憬(しょうけい)の思いを募らせた地。今はユネスコの世界遺産にも登録されている
▼ここで長年の間、桜の保護を続けているのが、吉野町にある財団法人吉野山保勝会。先週末、その理事長を務めている福井良盟さんと懇談する機会があった。日の本随一の名所が、1000年以上も守られてきた秘密は何か。いろいろと興味深い話をお聞きした
▼吉野の人々にとって桜は、ご神木であり、聖樹だという。1300年余り前、修験道の開祖と呼ばれる「役(えん)の行者」が、吉野の山中で難行苦行の末に金剛蔵王権現を感得。その姿を傍らにあった桜の木に刻んだことに由来するそうだ
▼それ故に「桜の枝を1本折る者は手の指を1本切り落とす」とまで言われ、大切に育てられた。加えて人々は信仰の証しとして進んで山桜を献木した。「下千本」に「中千本」「上千本」「奥千本」。春を彩る吉野の絶景は、こうした長い歴史によって培われた
▼そして西行の存在も大きかった。「吉野山こずゑの花を見し日より心は身にもそはずなりにき」。この歌人の登場により、かの地は桜の名所として不動のものとなった
▼福井さんは言う。「満開の桜もいいが、それよりも散るときだ」と。山を吹き抜ける風を受けて一斉に舞い上がる花吹雪は、何ともいえない美の世界だと話してくれた。かつて西行が絶賛した束稲山で。そして北上展勝地で。いつかそんな山桜の光景を見てみたいと思った。
▼ここで長年の間、桜の保護を続けているのが、吉野町にある財団法人吉野山保勝会。先週末、その理事長を務めている福井良盟さんと懇談する機会があった。日の本随一の名所が、1000年以上も守られてきた秘密は何か。いろいろと興味深い話をお聞きした
▼吉野の人々にとって桜は、ご神木であり、聖樹だという。1300年余り前、修験道の開祖と呼ばれる「役(えん)の行者」が、吉野の山中で難行苦行の末に金剛蔵王権現を感得。その姿を傍らにあった桜の木に刻んだことに由来するそうだ
▼それ故に「桜の枝を1本折る者は手の指を1本切り落とす」とまで言われ、大切に育てられた。加えて人々は信仰の証しとして進んで山桜を献木した。「下千本」に「中千本」「上千本」「奥千本」。春を彩る吉野の絶景は、こうした長い歴史によって培われた
▼そして西行の存在も大きかった。「吉野山こずゑの花を見し日より心は身にもそはずなりにき」。この歌人の登場により、かの地は桜の名所として不動のものとなった
▼福井さんは言う。「満開の桜もいいが、それよりも散るときだ」と。山を吹き抜ける風を受けて一斉に舞い上がる花吹雪は、何ともいえない美の世界だと話してくれた。かつて西行が絶賛した束稲山で。そして北上展勝地で。いつかそんな山桜の光景を見てみたいと思った。
コラム
(01/31)
「振袖火事」「丸山火事」とも呼ばれる明暦3(1657)年に発生した明暦の大火。数日にわたって江戸の町を焼き尽くし、死者は10万人に上ると伝えられる。江戸はこの大火を機に都市計画が進んだが、その影響は大名、旗本の宅地の引き換え、寺社の移転、広小路の新設など広範に及んだ
▼明暦の大火に由来する祭りが一関市大東町で2月11日に開かれる「一関市・大東大原水かけ祭り」。藩のお触れを受けて高僧が川で火防祈願のみそぎを行い、それが地域の若者に広まったというのが発祥の定説だ
▼「変遷の記録 大原水かけ祭り」(保存会発行)によると、祭りの形は時代によって変貌を遂げてきた。藩政時代は裸になった男たちが通りで水の掛け合いを繰り広げ、最後はけんかのようになって方々に壊れた水おけが散乱した。今のように裸男が水を浴びながら通りを走るようになったのは荷車の普及に伴い、防火水路が道の中央から両側に移った明治以降という
▼全国から200人を超える裸男が参加するようになった昨今は冬の祭りとして定着し、男たちは見物客が浴びせる清め水に無病息災や家内安全、大願成就などの願いを込めている
▼今年は東日本大震災の復興祈願を掲げ、津波で被災した大船渡市と宮城県気仙沼市から太鼓や鹿踊(ししおどり)の団体を招待し、沿岸の早期復興と地域の安寧を祈るという
▼明暦の大火から350年余り。江戸の町と同じく、被災地も今後復興計画が動きだし、新たなまちづくりが進む。未曽有の災害の厄を落とし、復興へ踏みだす誓いの場にもなるかもしれない。
▼明暦の大火に由来する祭りが一関市大東町で2月11日に開かれる「一関市・大東大原水かけ祭り」。藩のお触れを受けて高僧が川で火防祈願のみそぎを行い、それが地域の若者に広まったというのが発祥の定説だ
▼「変遷の記録 大原水かけ祭り」(保存会発行)によると、祭りの形は時代によって変貌を遂げてきた。藩政時代は裸になった男たちが通りで水の掛け合いを繰り広げ、最後はけんかのようになって方々に壊れた水おけが散乱した。今のように裸男が水を浴びながら通りを走るようになったのは荷車の普及に伴い、防火水路が道の中央から両側に移った明治以降という
▼全国から200人を超える裸男が参加するようになった昨今は冬の祭りとして定着し、男たちは見物客が浴びせる清め水に無病息災や家内安全、大願成就などの願いを込めている
▼今年は東日本大震災の復興祈願を掲げ、津波で被災した大船渡市と宮城県気仙沼市から太鼓や鹿踊(ししおどり)の団体を招待し、沿岸の早期復興と地域の安寧を祈るという
▼明暦の大火から350年余り。江戸の町と同じく、被災地も今後復興計画が動きだし、新たなまちづくりが進む。未曽有の災害の厄を落とし、復興へ踏みだす誓いの場にもなるかもしれない。
コラム
(01/30)
東日本大震災以降、非常時の移動手段として自転車が見直されている。一方で、事故防止対策が大きな課題に指摘されている
▼自転車関連の交通事故は全国で年間約15万件発生し、自転車と歩行者の接触事故に関しては過去10年間で1・5倍に増加。警察庁は昨年秋、自転車の通行が認められている歩道見直しや、違法自転車の取り締まり強化などを柱にした自転車交通の総合対策を各都道府県警に通達している
▼身近な乗り物に関する安全対策に子供たちも敏感に反応。全国の小中学生を対象にしたJA共済連の第40回「交通安全ポスターコンクール」優秀作314点(応募総数約16万点)の中で最も多かった題材は、自転車マナーや乗り方に関する作品で前年のほぼ2倍に当たる35点に上った
▼従来、自転車に関する交通ルールでは「2人乗り禁止」や「並列走行禁止」が定番だった。今回は「自転車も加害者に」や「歩道でのスピード走行 危険も加速」など、乗り方次第で凶器にもなり得る自転車の安全を改めて見詰め直す作品が目立った
▼運転中の携帯電話使用禁止を訴える作品27点のうち、9点は自転車運転中の使用に警告を発するものだった。日常的に自転車利用機会の多い中学生の作品が大半を占め、自分たちも気軽に利用する自転車であり、自らを戒める思いも込めたポスターに仕上がっているのも特徴という
▼主催者側では「わが国が考えなければならない交通安全の旬のテーマを鋭く指摘しているように思われる」と感想を語る。子供たちの思いが大人に伝わることを願ってやまない。
▼自転車関連の交通事故は全国で年間約15万件発生し、自転車と歩行者の接触事故に関しては過去10年間で1・5倍に増加。警察庁は昨年秋、自転車の通行が認められている歩道見直しや、違法自転車の取り締まり強化などを柱にした自転車交通の総合対策を各都道府県警に通達している
▼身近な乗り物に関する安全対策に子供たちも敏感に反応。全国の小中学生を対象にしたJA共済連の第40回「交通安全ポスターコンクール」優秀作314点(応募総数約16万点)の中で最も多かった題材は、自転車マナーや乗り方に関する作品で前年のほぼ2倍に当たる35点に上った
▼従来、自転車に関する交通ルールでは「2人乗り禁止」や「並列走行禁止」が定番だった。今回は「自転車も加害者に」や「歩道でのスピード走行 危険も加速」など、乗り方次第で凶器にもなり得る自転車の安全を改めて見詰め直す作品が目立った
▼運転中の携帯電話使用禁止を訴える作品27点のうち、9点は自転車運転中の使用に警告を発するものだった。日常的に自転車利用機会の多い中学生の作品が大半を占め、自分たちも気軽に利用する自転車であり、自らを戒める思いも込めたポスターに仕上がっているのも特徴という
▼主催者側では「わが国が考えなければならない交通安全の旬のテーマを鋭く指摘しているように思われる」と感想を語る。子供たちの思いが大人に伝わることを願ってやまない。
コラム
(01/29)
日本の食を支える農林水産業。安全・安心や効率的生産に向けた技術研究も避けて通れない課題で、2011年最大の成果に「ウナギ産卵場の解明」が選定されている
▼新聞報道された研究成果を基に、農林水産技術会議が毎年「農林水産研究成果10大トピックス」を発表。昨年の1位には水産総合研究センターと東大大気海洋研究所による、世界で初めての天然ウナギの卵採集が入った
▼日本には古くから季節の変わり目に当たる「土用の丑(うし)の日」に、ウナギを食する習慣が伝わる。一方で、人工養殖は長年の課題だった。ウナギがどこで生まれ、どの海を回遊し、日本にたどり着くのか生態は謎に包まれていただけに、産卵場所の解明は長年の夢実現に向けた大きな一歩だ
▼2位は「放射性セシウムに汚染された農地土壌の汚染技術開発・実証急ピッチ」で、原発事故に伴う農地の放射性物質汚染対策が取り上げられた。3位はアジアでの感染阻止に向けた「(牛)口蹄(こうてい)疫の感染の迅速診断につながる遺伝子検査法を開発」で、早期実現化が期待される
▼アイガモによる無農薬除草をヒントにした「水田用小型除草ロボット・アイガモロボット開発」が4位。5位には「ジャガイモの重大害虫シストセンチュウのふ化を促進する物質の化学合成に成功」が入り、抜本的な駆除法開発への大きな弾みになるものと注目されている
▼このほか植物ウイルスワクチン開発などが選定され、10位には「微細藻類からバイオ燃料」が選ばれた。石油に代わる新たなエネルギー源であり実用化が待たれる。
▼新聞報道された研究成果を基に、農林水産技術会議が毎年「農林水産研究成果10大トピックス」を発表。昨年の1位には水産総合研究センターと東大大気海洋研究所による、世界で初めての天然ウナギの卵採集が入った
▼日本には古くから季節の変わり目に当たる「土用の丑(うし)の日」に、ウナギを食する習慣が伝わる。一方で、人工養殖は長年の課題だった。ウナギがどこで生まれ、どの海を回遊し、日本にたどり着くのか生態は謎に包まれていただけに、産卵場所の解明は長年の夢実現に向けた大きな一歩だ
▼2位は「放射性セシウムに汚染された農地土壌の汚染技術開発・実証急ピッチ」で、原発事故に伴う農地の放射性物質汚染対策が取り上げられた。3位はアジアでの感染阻止に向けた「(牛)口蹄(こうてい)疫の感染の迅速診断につながる遺伝子検査法を開発」で、早期実現化が期待される
▼アイガモによる無農薬除草をヒントにした「水田用小型除草ロボット・アイガモロボット開発」が4位。5位には「ジャガイモの重大害虫シストセンチュウのふ化を促進する物質の化学合成に成功」が入り、抜本的な駆除法開発への大きな弾みになるものと注目されている
▼このほか植物ウイルスワクチン開発などが選定され、10位には「微細藻類からバイオ燃料」が選ばれた。石油に代わる新たなエネルギー源であり実用化が待たれる。




