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コラム

 (05/04)
 東日本大震災では県民の多くが突然の別れを体験した。家族、親族、知人、友人、愛犬・愛猫を亡くした。深い悲しみの中で暮らすうち、少しずつだが、出会いや新たな絆を持ち得た人も少なくなかったと思う

▼今、盛岡市の県立美術館では、パリにあるルーヴル美術館の作品を展示中だ。ルーヴルからのメッセージ「出会い」をテーマに岩手、宮城、福島の東北3県を巡回する第1弾として開催。ルーヴル・コレクションから23点の展示だが、いずれも本県で初公開という

▼ルーヴルといえば、「モナリザ」「ミロのビーナス」などの代表作が次々と頭に浮かぶ。世界で最も有名な美術館と言っていいだろう。とりわけ日本人に人気が高い。今回の震災に対し、ルーヴル側が被災者との連帯を強めたいと3県に巡回展を持ち掛け、短期間で実現した

▼出会いというテーマに沿って「受胎告知」や「三美神」など古代から18世紀までの彫刻、絵画、工芸品などが並ぶ。県立美術館との“出会い”も重視し、あえて常設展内に作品を配置し6月3日まで鑑賞できる

▼来県したルーヴルのアンリ・ロワレット館長は「人にとって芸術は不可欠のものであり、厳しい状況下に支えになる」と話す。美術に限らず音楽や演劇などが人々に勇気を与え、癒やしになることを確信させる言葉だ

▼出会いは対象となる相手がいてこそ。独りぼっちでは成り立たない。巡回展の基底にあるのも被災者への思いやりだろう。23作品は必ずしも有名ではないが、深みにおいては「さすが」と思わせる。そこにも一期一会がある。

コラム

 (05/03)
 「じゃがたまにんじん」。3度唱えたら何かかないそうな呪文やおまじないを思わせる言葉だが、殿方と違って厨房(ちゅうぼう)に立つことの多いご婦人方はぴんとくるはず。料理によく用いられる保存野菜のジャガイモ、タマネギ、ニンジンのことだという

▼さて、真ん中にましますタマネギは、文献によると既に古代エジプト時代からの食材で、ピラミッドを建設した労働者の賃金として支払われ、中世ヨーロッパでは「魔除け」に用いられるなど人類に身近な野菜。血液をさらさらにし、中性脂肪を減らすなど効能も優れている

▼花巻農協では、2012年度から新たな園芸作目として業務用タマネギ栽培に力を入れる。姉妹交流をしている群馬県内の農協から「地元の生協で九州産(3~4月)と北海道産(9~11月)の端境期(7~8月ごろ)にタマネギを求めている」との要望に応えた

▼一方で、大区画圃場(ほじょう)整備が進む中、米以外に機械を活用できる土地利用型作目は麦、大豆に限られるため、畑作にタマネギを加えることで、主に麦の連作障害が防げるメリットも想定した

▼買い手と単価が決まっていることから、生産者は安心して栽培に専念でき、課題は収量の確保になりそうだ。花巻農協は、生産者支援として、一定規模以上栽培団地化を基本に労力軽減を図る定植機の購入や種苗費の助成などを検討している

▼農業を取り巻く情勢は、農畜産物価格の低迷など依然として厳しいものがあるが、農家を元気づけるためにも、ピラミッドを建て、悪魔を除いてきたタマネギパワーに期待したい。

コラム

 (05/02)
 古くは「遠眼鏡」と呼ばれた望遠鏡。未知の領域を知りたいという探究心から生まれた道具の一つだ。遠眼鏡の響きはいかにもローテクだが、宇宙を研究観測する電波望遠鏡、宇宙望遠鏡となればまさにハイテクの塊である

▼「空を掘る考古学」。奥州市の奥州宇宙遊学館が開いた講演会で国立天文台名誉教授の石黒正人さんは天文学についてこう表現した。光の速さに限界があるため、地球から見る星の光は常に過去の姿であり、10億光年かなたなら10億年前の姿。さしずめ高性能の電波望遠鏡は「過去を見るタイムマシン」になるという

▼石黒さんが日本側リーダーとして構想段階から関わったのが東アジアと北米、欧州の国際共同プロジェクトとして南米で建設が進む巨大電波望遠鏡「ALMA(アルマ)」。2002年建設がスタートし、13年の完成を目指している

▼66台の大型パラボラアンテナを組み合わせて使う干渉計方式の望遠鏡で、チリ北部アタカマ砂漠の標高約5000メートルの高原に建設。星が出す電波を捉え、銀河や惑星の誕生、生命の起源などに迫る

▼未知の領域といえば、ビッグバン直後の状態を再現し、宇宙の謎の解明を目指す国際リニアコライダー(ILC)の本県誘致に期待が膨らむ。県内経済界を中心とした民間組織も発足、世界的研究施設の誘致態勢を築いた

▼東北加速器基礎科学研究会は震災復興、日本再生の象徴と位置付け、ILCを核とした将来ビジョンを策定中という。約137億年前にさかのぼり、万物の根源を探る研究施設の誘致で東北の明るい未来を見通したい。

コラム

 (05/01)
 小学校時代、巡回映画として「ビルマの竪琴」を見た覚えがある。市川崑監督が最初にメガホンを取ったモノクロの作品だ。兵士たちが口ずさむ「埴生の宿」の美しい合唱。僧となった水島上等兵が奏でる「仰げば尊し」のメロディーが印象的だった

▼その「ビルマ」から名称を改めたミャンマーで、民主化に向けた動きが進んでいる。同国では長年にわたり軍事政権が続いていた。だが、欧米からの厳しい経済制裁もあり、大きく方向を転換。先日行われた連邦議会の補欠選挙は、国際社会から注目を集めた

▼一連の民主化運動を指導してきたのはアウン・サン・スー・チー氏。この間、度重なる自宅軟禁をはじめ、英国にいる家族との別離など数多くの苦難があった。それにもめげることなく、固く重い扉を少しずつこじ開けてきた

▼彼女は「ビルマ建国の父」と呼ばれた将軍の娘。そうした血筋だからこそ常人にはまねのできない、強い意志を持ち続けたのだ-と勝手に思い込んでいた。しかし、「地名の世界地図」(文春新書)で調べてみると、ミャンマーとはビルマ語で「強い人」の意味。なるほど。合点がいった

▼首都「ヤンゴン」の地名も興味深い。「戦いの終わり」という意味を持つ。僧侶や学生など数千人が虐殺されたとされる自由化への戦いが、いよいよ終わりに近づいたのだろうか

▼あぁ、やっぱり自分は帰るわけにはいかない-。「ビルマの竪琴」のラストは、水島の心を代弁したオウムの声だった。夫や子供と離れ、祖国にとどまったスー・チー氏。二つの心が重なって見えた。

コラム

 (04/30)
 1901(明治34)年に刊行された与謝野晶子の歌集「みだれ髪」は三六判変形の袖珍(しゅうちん)本。着物の袖にちょうど入るくらいの大きさで、恋多き当時の乙女が袖に忍ばせ、一人静かに読んだのかもしれない

▼05年発行の夏目漱石「吾輩ハ猫デアル」(全3冊)は、菊判で、上小口に金箔(きんぱく)を張り付けた天金。読者自らがペーパーナイフで切りながら読み進むアンカットという凝った製本だ

▼岐阜県内で木工集団「オークヴィレッジ」を創設した稲本正氏の著書「森と心」(95年、角川書店)の表紙は木製。「木と語り、自然に学び、そして地球を考えたい」という著者の強い意志が、表紙からも伝わってくる

▼本作りには著者のほかに編集者、装丁家、挿絵師など実に多くの人々が関わっている。こうした活字を愛してやまない人々がつづった書物を、1ページずつめくって、その世界を散策する…。読書の醍醐味(だいごみ)はここにあるが、昨今は電子書籍分野の成長が著しい。電源さえあれば、いつでもどこでも読むことができる。タブレット端末は、本棚丸ごと持ち運べるようなもので、インターネットですぐに購入できる

▼ずいぶん便利な世の中になったものだ、と感心してばかりもいられない。「活字離れ」。これほど新聞人を震撼(しんかん)させる言葉もないが、その傾向は最近のデータを見ても顕著だ

▼来月12日まで「こどもの読書週間」が展開されている。「サン・ジョルディの日」(4月23日)はなかなか定着しないので、例えば「こどもの日」は子供に本を贈る日というようなことになればいいのだが。
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