445球糧にさらなる高みへ

全国ナンバーワン左腕として甲子園に乗り込んだ花巻東の菊池雄星(3年)だったが、その戦いはつらく苦しいものとなった。3度目の甲子園も涙で終わったが、打たれた悔しさで泣いた過去2度と今回は意味合いが違った。「投げられずに申し訳ない」。最後の試合はベンチで終わった。
「最強モンスター」。あるテレビ番組ではこう称して菊池雄を持ち上げた。大会前から取材陣が殺到し、注目度は文句なしで一番だった。だが、大会前から背中の痛みが菊池雄をむしばんでいた。3本塁打を浴びた1回戦の長崎日大(長崎)戦では、本盗の際に相手捕手と激突したこともあり、試合後に「骨に異常があるかもしれない」と佐々木洋監督に訴え出た。
痛みがあったのは、左腕側の肩甲骨付近。佐々木監督も選手時代に経験したといい「かなり痛いのは確か。投げる際に筋肉がブレーキをかけるように逆方向に引っ張られる」と分析。その痛みに伴うように、フォームも本来の姿を失っていた。
2回戦の横浜隼人(神奈川)戦前日には「ナーバスになっている」(佐々木監督)との理由で、投球練習時には報道陣に球場の外に出るよう願い出た。恒例となっていた練習後のインタビューも見送られた。
2回戦に勝利した後はさらに痛みが増したが、3回戦の東北(宮城)戦では前の2試合までとは別人のような投球を見せ、自己最速を更新する154キロ(球場表示)をマーク。「みちのくの剛腕」が復調したかに見えた。
だが、快投はここまで。準々決勝の明豊(大分)戦では歩くのもままならないほどになり五回途中降板。それでも「チームを心配させたくない」と明るく振る舞い、指揮官の問いにも「行けます」。だが、体の痛みは周囲の予想をはるかに超えていた。準決勝の中京大中京(愛知)戦はわずか11球でマウンドを降りた。
「全く違うのに、最強モンスターになろうとした。今のままの雄星でも十分抑えられるのに…」と佐々木監督。周囲の期待に応えようとして力んだ末の故障だった。そんなエースをチームメートは責めようとはしなかった。横倉怜武(同)は「雄星を中心にまとまっていた」、猿川拓朗(同)も「雄星がいたからこそここまで来られた」と感謝の言葉を口にした。
ただ、痛みがある中で154キロをマークしたのも事実。「あの試合は力みが消えていた。力まずできるかどうかが一流と二流の違い」と佐々木監督が語るように、さらなる成長のきっかけにもなるだろう。
「次のステージが待っている」と前を向いた菊池雄。最後の夏は不完全燃焼に終わったが、苦悩の中で投じた445球は今後の糧になるはず。「20年に1人の逸材」ともいわれる剛腕の進化は続く。(文中敬称略)

長崎日大戦で捕手の千葉と話す菊池雄(右)。大会中は背中の故障もあって苦しい投球が続いた
「最強モンスター」。あるテレビ番組ではこう称して菊池雄を持ち上げた。大会前から取材陣が殺到し、注目度は文句なしで一番だった。だが、大会前から背中の痛みが菊池雄をむしばんでいた。3本塁打を浴びた1回戦の長崎日大(長崎)戦では、本盗の際に相手捕手と激突したこともあり、試合後に「骨に異常があるかもしれない」と佐々木洋監督に訴え出た。
痛みがあったのは、左腕側の肩甲骨付近。佐々木監督も選手時代に経験したといい「かなり痛いのは確か。投げる際に筋肉がブレーキをかけるように逆方向に引っ張られる」と分析。その痛みに伴うように、フォームも本来の姿を失っていた。
2回戦の横浜隼人(神奈川)戦前日には「ナーバスになっている」(佐々木監督)との理由で、投球練習時には報道陣に球場の外に出るよう願い出た。恒例となっていた練習後のインタビューも見送られた。
2回戦に勝利した後はさらに痛みが増したが、3回戦の東北(宮城)戦では前の2試合までとは別人のような投球を見せ、自己最速を更新する154キロ(球場表示)をマーク。「みちのくの剛腕」が復調したかに見えた。
だが、快投はここまで。準々決勝の明豊(大分)戦では歩くのもままならないほどになり五回途中降板。それでも「チームを心配させたくない」と明るく振る舞い、指揮官の問いにも「行けます」。だが、体の痛みは周囲の予想をはるかに超えていた。準決勝の中京大中京(愛知)戦はわずか11球でマウンドを降りた。
「全く違うのに、最強モンスターになろうとした。今のままの雄星でも十分抑えられるのに…」と佐々木監督。周囲の期待に応えようとして力んだ末の故障だった。そんなエースをチームメートは責めようとはしなかった。横倉怜武(同)は「雄星を中心にまとまっていた」、猿川拓朗(同)も「雄星がいたからこそここまで来られた」と感謝の言葉を口にした。
ただ、痛みがある中で154キロをマークしたのも事実。「あの試合は力みが消えていた。力まずできるかどうかが一流と二流の違い」と佐々木監督が語るように、さらなる成長のきっかけにもなるだろう。
「次のステージが待っている」と前を向いた菊池雄。最後の夏は不完全燃焼に終わったが、苦悩の中で投じた445球は今後の糧になるはず。「20年に1人の逸材」ともいわれる剛腕の進化は続く。(文中敬称略)