
約1メートルのタックルダミーを使って低い重心からタックルを繰り出す黒沢尻工ラグビー部の選手
10月の第89回全国高校ラグビー大会県予選決勝-。黒沢尻工は8-10で盛岡工に逆転を許して迎えた前半22分、相手陣内22メートルラインアウトからのモールをゴールに向けて徐々に押し込む。赤と黒の塊となった選手がじわりじわりと歩を進めスタンドの歓声が一層大きくなった時、一気に選手がゴール前になだれ込んで再逆転を決めた。「赤べこ」軍団復活を印象付けるドライビングモールの瞬間だった。
同校が第72回大会に出場した際、左プロップの主将として全国の舞台で活躍した高橋智也監督(35)が、4年ぶりに同校に赴任したのは2008年。黄金時代を知る高橋監督は、長年にわたり同校ラグビー部を指導した高橋正栄コーチ(64)と共に、93年以来花園から遠ざかっていたチームの再建に取り組んだ。
チーム強化のために、選手の基本的な生活態度を改めることから指導した。あいさつをすることから始め、話を聞く態度、用具や部室など物を大事にすることを徹底し、「ラグビー部員の前に黒工生であれ」と呼び掛けた。赤松克哉主将(3年)は「強豪校と対戦するたび、強いチームはあいさつや態度などでも一流だと知った」と言うように、徐々に高橋監督の考えが浸透していった。
練習では、伝統の強いFWの復活に取り組んだ。基本となるタックルでは、重心を低くして相手に飛び込むよう選手に徹底させるため、通常よりも低い約1メートルのタックルダミーを特注。また、常に試合の一場面を想定し毎回明確なテーマを持った練習を取り入れ、選手が自ら考えながら取り組むように指導した。
高橋監督の「グラウンドに出たら上下関係はない」との持論から、試合や練習中、選手は名前で呼び合い課題克服に取り組む。赤松主将は「みんなが一つになってできるよう互いに声を掛け合い、集中して練習している」、ラインアウト・モールリーダーの岩舘俊宗選手(3年)は「セットプレーを成功させるために選手同士で話し合っている」と話す。
成果が表れたのは08年の新人大会。現3年生を中心としたチームで常勝盛岡工に19-7で快勝し優勝を飾った。練習で培った鋭いタックルからプレッシャーを与え続けて、相手を力で封じ込めた一戦だった。
高橋コーチは「今も昔も生徒はみんな良い子。あとは指導者が導くだけ」と語り、高橋監督は「目指すは伝統のFWを中心としたパワーラグビー。FWが前で勝負しバックスを生かして勝利を勝ち取りたい」と全国大会に向けて力を込める。