悩んだ猿川先発が当たり

南陽工戦で同点弾を放った猿川選手(背番号5)を迎えるナインと佐々木監督(右)=3月31日、甲子園
南陽工戦で同点弾を放った猿川選手(背番号5)を迎えるナインと佐々木監督(右)=3月31日、甲子園
 花巻東の選手たちは常に「目標は日本一」と口にしていた。以前の岩手の選手にとっては、果てしなく遠いイメージのある言葉だが、ナインは本気だった。佐々木洋監督がその理由を明かす。

 「(昨年)秋の神宮大会を見に行ったら、思った以上にレベルが高くなかった。というよりも、東北地区のレベルの高さを再確認した。大会から帰ってすぐ選手に『おい、本気で日本一になれるぞ』と声を掛けた」

 その目標に向けたスタートとなったのが、センバツ1回戦の鵡川(北海道)戦。神宮大会4強で強打が売りだったが、自信を持って臨んでいた。

 「神宮で見た時、打撃は確かにすごいものがあったが、バント処理などにすきがあった。打者さえ抑えれば何とかなると思った。試合になると予想通りの展開になった」

 快進撃を続け、県勢初の決勝進出を決めたが、最もポイントとなったのはどの試合だったのか。その答えは意外にも準々決勝の南陽工(山口)戦だった。この試合の先発はエースの菊池雄星投手(3年)ではなく、本来は三塁手の猿川拓朗選手(同)だった。

 「いかに決勝で雄星にいい状態で投げさせるかを考えていた。トーナメントを見て、相手を準々決勝がPL学園(大阪)、準決勝は早稲田実(東京)と予想し、本当は準決勝で猿川を使おうと思っていた。だが両方とも負けてもくろみが崩れた。本当に悩んで南陽工で猿川を先発させ、試合中は緊張していた。3点リードされて苦しかったが、猿川の本塁打で追い付いた時だけは、はしゃいでしまった」

 いよいよ念願の日本一まであと1勝と迫ったが、清峰(長崎)に0-1で敗れて大旗の「白河越え」は果たせず。敗因は何だったのか。

 「気合が入り過ぎていたのが一つ。そして五回に(佐藤)隆二郎(3年)がフライを打ち上げて走らなかったことを怒ってしまい、ベンチの雰囲気が悪くなった。いつもならリードされても盛り上がっていくのに。わたしが原因だった」

 取り組む姿勢も日本一を目指していただけに、全力疾走を怠ったことを見逃せなかった。日本一の夢は夏へと持ち越された。