古代から人々の生活を支えてきた馬。今なお、地域や人々の生活・文化に根付いている。第三部では人と馬とのかかわりを紹介する。

チャグチャグ馬コ(盛岡広域)

チャグチャグ馬コ本番に向け、一般公募の子供たちを対象とした練習会。伝統は脈々と受け継がれている=6月1日、矢巾町内
チャグチャグ馬コ本番に向け、一般公募の子供たちを対象とした練習会。伝統は脈々と受け継がれている=6月1日、矢巾町内
 毎年六月、色とりどりの装束を身にまとい軽やかな鈴の音を鳴らし、滝沢-盛岡間の約十五キロを練り歩く馬行列。みちのくの初夏を彩る風物詩・チャグチャグ馬コだ。人馬の無病息災、五穀豊穣(ほうじょう)を願い江戸時代から脈々と受け継がれ、今年も十四日に予定されている。

 毎年華やかな行列が繰り広げられる一方、参加する装束馬は平成二、三年の百二頭をピークに減少し、今年は八十七頭の予定。首長や来賓らが乗る役員馬も含め、県南や近県から馬を借りて賄っている。「装束も一からそろえると、一頭出すのに三百万円ほど掛かる。年一回の晴れ舞台のためだけに飼い続けるのは困難」と関係者は語る。住環境の都市化で馬を飼育できる環境も狭くなる中で、担い手の高齢化や後継者不足、さらに最近の飼料価格高騰も追い打ちをかける。

 危機感を募らせる関係者は、保存継承へ活発な動きを見せる。馬主によるチャグチャグ馬コ同好会と行政の保存会は、乗り手と引き手を一般公募し、馬の魅力、文化を伝えている。一般の引き手は遠く埼玉県からの参加者も。小学三年生までの乗り手は六人の定員に対し、七十三人が応募する人気ぶりだ。

 また、滝沢村は二十年度新たに、馬購入費と預託料一頭分合わせて百四十万円を計上。普段は村内の馬っこパーク・いわてに飼育を委託して観光資源に活用するが、牝馬として繁殖も期待する。

 本番に向け、所有馬を調教する酪農家工藤定幸さん(55)=盛岡市玉山区=は「高齢化で出したくても出せない人も多くなり、馬を扱える人が少なくなっている。若い人にきっちり引き継いでいかないと」と力を込める。一般公募で馬コに乗る吉田魁君(8つ)=矢巾町立煙山小三年=は「本番では楽しく手を振りたい。(チャグチャグ馬コは)ずっと続いてほしい」と十四日が待ちきれない様子。馬コは今年も多くの人々の思いを乗せ練り歩く。

 チャグチャグ馬コ同好会副会長・漆原忠夫さん(76)=矢巾町 農耕馬が減り担い手の後継者も不足しているだけに、危機感はある。伝統を絶やさないよう将来の担い手確保が必要だ。公募やイベントを通じ、多くの子供たちや成人にも興味を持ってほしい。行政とも連携しながら後継者を育て、チャグチャグ馬コの伝統と馬事文化を継承していきたい。