一関・平泉

平和希求の理念 後世に 「平泉世界遺産の日」 祈りや講演会

平和の祈りで世界平和へのメッセージを朗読する文化財愛護少年団のメンバーと合唱を披露した平泉小の5、6年生

 「平泉世界遺産の日」の29日、平泉町内で平泉の平和と平等の理念を発信する「平和の祈り」と、児童生徒を対象にした「平泉学講演会」が行われた。平泉の文化遺産の世界文化遺産登録から6年となる節目に、関係者は平泉の歴史や文化、世界遺産の価値に理解を深め、後世に伝えていくことを誓った。

 平和の祈りは町内外から約400人が参列して観自在王院跡で行われた。中尊寺の山田俊和貫首、毛越寺の藤里明久貫主をはじめ町内7カ寺の僧侶13人が法要を営み、世界平和、人類和合、東日本大震災犠牲者の冥福と震災からの復興を祈った。

 女声合唱団「コール・ファンタジー」、平泉小学校5、6年生103人がそれぞれ合唱を披露。平泉ユネスコ協会文化財愛護少年団の菅原光哉君(同校6年)と東郷友希さん(同5年)、佐々木裕恩さん(同)が世界平和へのメッセージを朗読し、「900年前に平和に暮らす浄土の国を目指してつくられた平泉の理想は、今でも人々の心に受け継がれている。平泉で生まれ育ったことに誇りを持ち、この素晴らしい文化をさらに多くの人へ広めていく」と誓った。

 青木幸保町長は平泉世界遺産の日に際し「私たちは平泉の文化遺産に込められた平和への理念を広く世界へ発信しなければならない。それこそが平和を希求する平泉の重大な使命。世界遺産平泉は東北地方の復興と共に歩んでいく」と述べた。 平泉学講演会は平泉小で開かれ、平泉、長島両小6年生、平泉中2年生の計129人が聴講。岩手大平泉文化研究センターの伊藤博幸特任教授を講師に、世界遺産登録の意義や発掘調査研究から解き明かされた奥州藤原氏時代の人々の暮らしに理解を深めた。

 中尊寺金色堂や毛越寺浄土庭園、無量光院跡や柳之御所遺跡などから見つかった遺構や遺物から工芸技術や食文化、暮らしぶり、海外との交易など平安後期の平泉を学び、千葉しおりさん(平泉小)は「平泉は世界に誇れる素晴らしい都市だと改めて感じた。大人になったら平泉の世界遺産を守り後世に伝えていく」と決意。佐々木海真君(平泉中)は「発掘された物から数多くのことが学べることが分かった。いろいろな視点から世界遺産を調べてみたい」と意欲を高めた。

 平泉の文化遺産は、中尊寺や毛越寺をはじめとする仏教寺院、浄土庭園など12世紀に奥州藤原氏が築いた黄金文化の遺跡群。日本固有の自然崇拝思想などと結び付いた仏教の中でも特に浄土思想の考えに基づいて仏国土(浄土)を現世に表すためにつくられた独特の事例であることなどが評価され、2011年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録された。

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