小林潤(盛岡中央高出)初優勝 W杯ジャンプ開幕戦 日本男子3季ぶり
【ビスワ(ポーランド)時事】ノルディックスキーのワールドカップ(W杯)ジャンプ男子は19日、ポーランドのビスワで個人第1戦(HS134メートル、K点120メートル)が行われ、26歳の小林潤志郎(盛岡中央高―東海大―雪印メグミルク)が124メートル、126・5メートルを飛び、260・5点でW杯初優勝を遂げた。日本男子のW杯勝利は2014年11月のルカ大会(フィンランド)で葛西紀明(土屋ホーム)が勝って以来3季ぶりで史上13人目。
小林潤は1回目で2位タイにつけ、2回目に逆転した。
弟の小林陵侑(盛岡中央高―土屋ホーム)は26位、伊東大貴(雪印メグミルク)は2回目の着地後に転倒して29位。葛西紀明(土屋ホーム)は1回目31位で2回目に進めなかった。
ソチ五輪2冠のストッフ(ポーランド)と昨季W杯総合王者のクラフト(オーストリア)を両脇に従え、引き締まった顔で君が代を聴いた。五輪シーズンを最高の形で滑り出した小林潤は「こんなにうまくいくとは」。控えめに快挙を喜んだ。
W杯の過去最高は13位。本場の欧州を驚かせた初優勝はフロックではなく、地力の高さを感じさせた。2回とも不利な強めの追い風を受けながら、大幅にK点をクリア。飛行姿勢、着地の安定感も光り「夏にやってきたことをそのまま出した」と練習成果を強調した。
昨季は不振で世界選手権代表から落選。一念発起して助走の重心を上げたことで滑走が安定し、今夏のグランプリ2連勝につなげた。夏に好調でも、氷の助走路となる冬に感覚が狂う選手も珍しくないが、「飛び出すパワーを蓄えて滑ることができる。助走がしっかりしているので風を気にせず飛べる」と手応えも確か。高めた技術が冬でも通用することを示した。
あまり感情を出さず、原田雅彦監督が「宇宙人タイプ」と評す26歳。弟の陵侑と一緒に平昌五輪代表を目指すニューヒーローは「楽しみながら臨んでいきたい」と気負いがない。
小林 潤志郎(こばやし・じゅんしろう)ノルディック複合の選手として頭角を現し、盛岡中央高時代の2010年世界ジュニア選手権個人で金メダル獲得。東海大でジャンプに転向し、15年世界選手権で個人ラージヒル13位、団体4位。昨季までのW杯自己最高は13位。168センチ、55キロ。26歳。八幡平市出身。
小林陵は2季ぶりにW杯ポイント(30位以内)を獲得した。1回目は112・5メートルにとどまったが、ギリギリの30位。2回目はK点を上回る飛躍で順位を四つ上げた。「思うような結果ではなかったけど、去年取れなかったポイントが取れたので」とほっとした様子を見せた。
昨季はW杯の厳しさを痛感させられ、夏場に所属先の監督を兼任する葛西から「悔しさを思い出せ」とハッパを掛けられてきた。まずは練習の成果を出した21歳の新鋭は「ここからどんどん上げていきたい」。初優勝を飾った兄に続く決意を示した。
45歳の葛西は1回目で後輩の小林陵に一歩及ばず31位に終わり、不本意な開幕戦となった。集中力を高めるためのいつもの流儀で試技を回避して本番に臨んだが、114・5メートル。大歓声でベテランの登場を迎えた地元ポーランド人の期待にも応えられなかった。風の条件が悪かったか、との問いに苦笑いで首をひねりながら、ジャンプ台を後にした。
①葛西 紀明※17勝
②船木 和喜※15勝
③原田 雅彦 9勝
④岡部 孝信 5勝
⑤伊東 大貴※4勝
⑤秋元 正博 4勝
⑦東 輝 2勝
⑦斎藤 浩哉 2勝
⑨小林潤志郎※1勝
⑨宮平 秀治 1勝
⑨湯本 史寿 1勝
⑨佐藤 晃 1勝
⑨八木 弘和 1勝
※は現役