「商人の町・花巻」伝える蔵 住民から解体惜しむ声 災害公営住宅整備で近く工事
花巻中央地区の災害公営住宅整備に伴い、花巻市上町の旧誠山房裏にある蔵の本格解体が近日中に始まる見通しで、近隣住民から「商人の町・花巻」を今に伝える建物を惜しむ声が上がっている。事業説明会などで地域の周知は進んでいる一方、専門家らから「そう簡単に手に入らないような立派な建材も使われている。なんとか一部だけでも他の木物に転用できないものか」といった願いも寄せられている。
明治~大正期を中心に花巻随一の規模を誇った米穀商・梅津喜八の「山喜」で利用された蔵。同町周辺は太平洋戦争末期の花巻空襲で大きな被害を受けたが、堅牢(けんろう)な造りもあって焼失を免れた。
広さは70平方メートルほどで、3階建て様に分割されている内部は階段で昇降する造り。水害予防にも配慮した基礎や柱、入念な仕上げの壁、瓦屋根など数々の自然災害も乗り越えた頑丈な造りは、当時の主の裕福さを垣間見せる。
同市下小舟渡の木村清且一級建築士は「花巻の文化を担った豪商を象徴するのがあの蔵。宮沢賢治もそんな環境にいたが、一方で金貸しのような仕事は嫌い、童話『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝説』などにつながってくる。そういう歴史、賢治童話の分かるエリアにある蔵」と解説。花巻市上町商店街振興組合の佐藤健一郎理事長も「約50年ここ(上町)で仕事しているが、ずっと残っている建物はあれだけ。壊してしまわず、何かに使えないものか。本当にもったいない」と惜しむ。
同地区の災害公営住宅整備は、2018年度末の完成が見込まれている。
【訂正・6日付】蔵は豪商・梅津喜八の「山喜」で使用されたものでした(最終所有者は健一郎氏)。