一関・平泉

現代美術若手作家の登竜門 VOCA展出品 千厩・増子さん、細密画「異果て」

増子さんの作品「異果て」
岩手連想の形 自由に

 一関市千厩町の増子博子さん(35)は、現代美術に取り組む若手作家の登竜門として知られる「VOCA展」の出品者の一人に選ばれた。30日まで東京都の上野の森美術館で開催中の同展で増子さんの作品「異果(いは)て」が展示されている。初出展の増子さんは「岩手の人や自然から受けたものを作品に表現することができた」と語り、今後も地域の風土や歴史を作品に反映させようと創作意欲を膨らませている。

▲増子博子さん

 VOCA展は、平面美術で国際的にも通用する将来性のある若手作家の支援を目的に1994年から毎年開催。全国の美術館学芸員や研究者、ジャーナリストらから推薦委員を選出し、40歳以下の作家を推薦してもらい、作家に出品を依頼している。これまで延べ855人の作家が出展し、数多くの作家が国内外で活躍を続けているという。

 「異果て」は増子さんが10年ほど前から制作する盆栽をテーマにした細密画シリーズの流れをくむ作品の一つ。画面を植木鉢に見立て、1カ所に種を植え、そこから世界を広げていく-というイメージで、土地の風土や自身の体験などを連想ゲームのように自由に描き表現しているのが特徴。

 タイトルは「岩手」をもじったもので、郷土芸能の鹿(しし)踊りの装束にあるササラをはじめ、小花、葉、イカ、タコなど岩手での生活で影響を受けたさまざまな物を連想させる形が緻密に描かれている。製図用のペンとインクを用いて仕上げた縦250センチ、横190センチの大作で、昨年7月から約4カ月かけて制作した。

 増子さんは宮城県大崎市に生まれ、小学校から高校まで山形県米沢市で過ごした。大学時代は版画を中心に制作していたが、卒業後はペン画に取り組むようになった。2011年から岩手で暮らし始め、海や山、郷土芸能など独自の文化に影響を受け、それを作品に反映させている。

 今回の同展には若手作家34人が出展しており、本県は増子さんのみ。実際に同展に足を運んだ増子さんは「現代美術に取り組む同年代の作家の作品が一堂に集まり、作家とも交流することができて良い機会になった。今後も制作を続け、展覧会にも出品していきたい」と話している。

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