奥州・金ケ崎

まちづくり会社 黒船(江刺)が解散 入居店舗は存続 業績回復見込めず【奥州】

黒船が進めた蔵のある街並み景観保全。20年の節目で会社を解散した

 蔵を生かした街づくりを進めてきた奥州市江刺の黒船(資本金9910万円、綾野輝也社長)は31日、臨時株主総会を開き、同日付で解散した。慢性的な資金不足から役員が赤字補填(ほてん)を繰り返してきたが、継続は困難として創業20年の節目に廃業を決断した。

 同社は、1997年に当時は珍しかった100%民間出資のまちづくり会社として発足。営業利益を目的とせず、蔵のある街並み景観を保全するため解体予定の蔵を譲り受けて移転・修復し、中心市街地活性化につなげる狙いだった。

 93年に郊外にオープンした歴史公園えさし藤原の郷の観光客を商店街に呼び込むことも視野に、行政も歩行者専用道路「蔵まちモール」を整備するなど連携。滋賀県長浜市の黒壁がガラス館を出店(撤退後、黒船が直営)するなどした。

 ただ、蔵の移築や補強・修復(計8棟)の経費がかさんだ上、2008年の岩手・宮城内陸地震による建物損壊やガラス商品破損、11年の東日本大震災後の観光客激減による営業売り上げも低迷したまま。16年度末の繰越損失が3110万円、借入金合計は4610万円だった。

 業績の回復が見込めないため、1月の理事会で解散の方針を確認。会長職から3月に再び就任した綾野社長が奥州商工会議所江刺支所での臨時株主総会で経緯を報告して陳謝し、出席株主の全会一致で解散を決議した。

 亀井祐一前社長が買い取る資産(旧ガラス館の建物)の売却金で銀行借入金を全額返済し、役員と株主の借入金を債務放棄することで倒産を回避した。今後、残余財産を確定して清算する。入居店舗は建物の所有者が代わるだけで今のまま存続する。

 綾野社長は「出資者には当初から『少しずつ変わる街並みが配当』との理解を得て協力いただいた。皆さんの支援のおかげで蔵の街並みが残り、一つの役目を終えた。黒船はなくなるが、せっかくできた街並みを活用してもらえたら本望」と話した。

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