奥州・金ケ崎

西行の歌枕巡り800キロ 静岡・掛川―束稲山 髙橋さん夫妻(奥州・水沢)が完遂

西行の歌枕の旅をたどり、桜が満開の束稲山に到着した髙橋さん夫妻
姉妹都市へ思い強く

 桜を愛した歌人・西行(1118~90年)が晩年に決行した東北への旅。奥州市水沢久田の文秀堂社長髙橋竜太郎さん(59)と妻綾子さん(57)は、その足跡をたどる約800キロの行程を半年余りかけて今春完遂した。出発点は姉妹都市の静岡県掛川市で、両市の交流発展への思いを強くした。

 発端は三陸沿岸部のホテルなど取引先の多くが被災した東日本大震災。伝統工芸品や事務用品を取り扱う同社の観光部門の売り上げが8割減少し、創業200年を超える老舗企業の倒産を覚悟したほど。そこから南部鉄瓶と掛川市の深蒸し茶を関連付けた物産交流に活路を求め、同市での物産展開催にこぎ着けた。会社の経営状況は「平泉」の世界遺産登録決定後、回復に向かった。

 震災2カ月後に出向いた同市郊外の峠「小夜の中山」で見つけたのが西行の歌碑。奥州市衣川と同じ西行ゆかりの歌枕(和歌の名所)の地という共通点に興味を持ち、旅行業の国家資格を取得するほど旅行好きだった夫妻が両市間の旅を計画。

 西行生誕900年に当たる2018年春のゴールを目指し、17年9月に掛川市日坂を車で出発。鎌倉(神奈川県)、白河関跡(福島県)、藤原実方の墓(宮城県名取市)など歌枕の地に立ち寄りながら数日間ずつ5回に分けて巡り、平泉町・中尊寺の月見坂を経て4月20日に束稲山に着いた。

 「ききもせず 束稲やまのさくら花 よし野のほかにかかるべしとは」。西行が若い頃に初めて平泉を訪れて詠んだとされる束稲山で、満開の桜に迎えられた髙橋さんは「個人的な趣味で始めたが、今回の旅が姉妹都市の民間交流の一助になれば」と願い、綾子さんも「土地ごとの歴史の跡を見ることができて楽しかった」と充実感に浸った。

 髙橋さんは「小夜の中山は今でも車がひっくり返りそうなほど急で狭い難所。高齢の西行があそこを通って東北に向かったのは、死をも覚悟したよほどの思いがあったはず」と推測し「世界に誇れる歴史と文化があるまちの魅力を都会に出た若い人たちにも知ってもらい、地域の盛り上げにつなげたい」と語った。

 髙橋さんが専務を務めるまちづくり奥州は、指定管理する同市水沢横町の市まちなか交流館で8日から20日まで、髙橋さんの紀行文と写真を紹介する「西行陸奥歌枕の旅」パネル展を開く。

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