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沿岸被災地を歩く 夏休み親子見学会

【岩手コース】三陸鉄道南リアス線盛駅から震災学習列車に乗車し、説明を受けながら釜石を目指す。車両は産油国として知られるクウェートからの支援を受けて購入したうちの1両で、側面には由来を示す感謝の言葉が記されている
震災学び 明日へ

 東日本大震災からの復興を目指す三陸地域を巡る親子見学会「沿岸被災地を歩く」(岩手日日新聞社マルチメディア営業局主催)は、岩手、宮城の各コースで7月28日に行われた。復興支援と記憶の風化防止、災害への意識啓発に向け、被災地の今を見てもらおうと企画したバスツアー。一関市をはじめ奥州市や北上市などから児童とその保護者24組56人が参加した。岩手コースでは、三陸鉄道が運行している「震災学習列車」へ乗車し津波による被災の状況や自ら身を守る大切さについて学習。宮城コースでは、東北電力女川原子力発電所や水産加工品の冷凍冷蔵施設などを訪れ、明日を担うエネルギーづくりと産業の再生に理解を深めた。

震災学習列車 被害、復興を肌で 岩手コース
▲【岩手コース】「あの岬の所だよ。見えるかな」。三陸鉄道南リアス線運行部の熊谷松一さん(右)。丁寧に震災由来のスポットや観光名所を案内してくれた

 岩手コースには、一関市、奥州市、北上市、紫波町、宮城県多賀城市などから15組38人が参加し、三陸鉄道南リアス線の盛駅から震災学習列車に乗車した。盛駅から乗車した震災学習列車の車両はクウェートからの支援で購入したうちの1両で、側面にはクウェートへの感謝の言葉がアラビア語、英語、日本語で表記してあった。

 列車内では、南リアス線運行部の熊谷松一さん(54)が震災発生時の様子やその後のまちの復興について解説。三陸鉄道は線路の位置が高くトンネルも多かったことから津波の被害が少なかったことや、1896年に発生した明治三陸津波の教訓が生かされて避難が間に合った地域などについて生々しく語った。

▲【岩手コース】三陸駅で一時停車し、1分間黙祷。犠牲者の安らかな眠りを祈った

 また、車窓から見える改修された防潮堤を指して「改修工事には、地元からかなりの反対意見があった。色の黒い部分が元からあった部分、その上が震災後に建造された部分で、海が全く見えなくなってしまうことに抵抗感を感じる住民も多かった」と復興工事の持つ複雑な面を伝えた。三陸駅では、海に向かって1分間の黙祷(もくとう)をささげた。

 2019年3月にはJR山田線の釜石-宮古駅間が移管され、久慈-盛駅間163キロがつながる三陸鉄道。車窓からは沿線から震災学習列車に手を振る住民の姿も見られ、熊谷さんは「地元の人たちには、全国から既に震災を忘れられているのではないか、という不安がある。防災意識を高め、自然災害から自分の身を守ってほしい」と呼び掛けていた。

岩手コース(15組38人)
 JR水沢駅→JR一ノ関駅→アバッセたかた(車窓)→三陸鉄道南リアス線盛駅(震災学習列車乗車)→三陸鉄道南リアス線釜石駅→釜石鵜住居復興スタジアム→道の駅遠野風の丘→JR水沢駅→JR一ノ関駅

女川原子力PRセンター エネルギーについて学ぶ 宮城コース
▲【宮城コース】日本のエネルギー事情についてクイズ形式で理解を深めた(女川原子力PRセンター)

 東北電力女川原子力PRセンターでは、原子力発電の仕組みをはじめ、エネルギー資源に限りがあることや、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量が発電方法によって違うことなどをクイズ形式で学習。電気を中心としたエネルギーが、日本の経済や日々の暮らしと密接な関係にあることを確認しながら、電気の安定供給の大切さなどを実感した。

 この後、女川原子力発電所敷地内を見学し、発電所の敷地面積は東京ディズニーランド約3個分相当になることや、1年間に使用される宮城県内の電気とほぼ同じ量の電気を1~3号機で発電できることについて説明を受けた。さらに、発電所が海に面しているため高さ29メートル、全長800メートルもの防潮堤で万一の津波に備えているほか、建屋の耐震化など地震についてもしっかり対策されていることに理解を深めた。

▲【宮城コース】マイナス30度の冷凍庫も体験。(マスカー水産加工品冷凍冷蔵庫)

 マスカー水産加工品冷凍冷蔵庫では、大震災で水産加工場が壊滅したため、受け入れができなくなったことから、水産業を再興するために整備されたのが多機能水産加工施設。女川で水揚げされた魚をマイナス30度で冷凍、保管することで水産加工を再開できるようになり、女川を拠点とした漁業にも活気が戻っている。建物は津波対応型で、人命と保管されている水産物を守る新しい構造となっている。

 参加者は最初のうち「どの程度冷たさを感じるのだろう」と興味を示していたが、実際入ると、マイナス30度の冷たさに冷凍庫から逃げ出していた。外気に触れるとメガネは曇り、体温はすぐには回復せず、冷凍庫の威力を実感していた。

 母親と参加した菅原萌さん(11)=大東小5年=は「原子力発電所を見学し、貴重な体験をすることができました」と話していた。

宮城コース(9組18人)
 JR水沢駅→JR一ノ関駅→シーパルピア女川→マスカー水産加工品冷凍冷蔵庫(冷凍工場見学)→東北電力女川原子力PRセンター→女川原子力発電所→蒲鉾本舗髙政(かまぼこ試食と工場自由見学)→JR一ノ関駅

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