平安時代の仏像と確認 木造阿弥陀如来坐像 文化財指定も検討【奥州】
奥州市教委が実施した調査で、同市前沢山下の専念寺にある「木造阿弥陀如来坐像」が、平安時代に造られた仏像と確認された。カツラ材の一木造りで、保存状態が良く、数少ない安倍・清原時代の仏像と分かった。
市教委は2017年度、市内にある古い仏像の造られた年代や美術的価値を調べるため、水沢と前沢両地域の18寺院・堂の仏像23体を調査した。このうちの2体について、長岡龍作東北大教授らと共に、9月1、2日に詳細調査を実施した。この結果、様式や造り方、用材などの特徴から専念寺の本尊「木造阿弥陀如来坐像」が平安時代後期(11世紀後半~12世紀)に造られた仏像と確認。他の1体は江戸時代の作と判明した。
カツラ材の一木造りの木造阿弥陀如来坐像は高さ73センチで、頭の螺髪(らほつ)も彫り出して表現している。右肩に袈裟(けさ)を掛け、腹の前で印を結んでいる姿。
様式や用材などの特徴から、浄土宗の専念寺につながる常願寺が開山した1470(文明2)年より前の天台宗の寺院だった頃の仏像と判断。一木造りをはじめ、頭の「肉髻相(にくけいそう)」の盛り上がりなどから、寄木造りの藤原時代より以前の安倍・清原時代の仏像だと分かった。市内では、黒石寺の国指定重要文化財の「木造僧形坐像」と同じ年代。
前沢村の江戸時代の「安永風土記」には「恵心僧都(えしんそうず)作 木造阿弥陀如来坐像」と記載されている。
市教委歴史遺産課の川田啓介・企画管理係長兼上席主任学芸員は「市を代表する仏像となる価値が十分ある。文化財指定を検討していきたい」と話している。