奥州・金ケ崎

令和も時刻む 後藤伯の柱時計 ソニー保管、シチズン修復し記念館に寄贈【奥州】

後藤新平記念館に寄贈された後藤愛用の柱時計
80年の時超え再生

 奥州市水沢出身の政治家後藤新平(1857~1929年)を顕彰する同市水沢大手町の市立後藤新平記念館に、後藤が東京・麻布の邸宅で愛用した柱時計が寄贈された。ソニー(本社東京都)に長年保管され、シチズン時計(同)の手で修復。後藤とゆかりの深い両企業の“恩返し”でよみがえり、令和も静かに時を刻む。

 柱時計は振り子式で秒、分、時間(24時間表示)を表す針が別々の位置にある。やや経年劣化があるものの、動きに問題はない。

 後藤の没後、遺品として東京市政調査会に寄贈された。同会は東京市長在任中に後藤が創設した調査研究機関で、後藤の伝記編纂(へんさん)会も兼ねた。現在は後藤・安田記念東京都市研究所となっている。

 後藤を東京市助役として補佐したソニー初代社長の前田多門(1884~1962年)も創立から関わった。時計はこのつながりから田島道治元会長の代に同社が譲り受け、東京本社応接室に長らく設置されていた。

 時は流れ、2018年10月。同社のオフィスの移転を受け、時計を後藤の生まれ故郷で公開、保存してもらおうと寄贈を決定。18年度中に同館に運び込まれた。

 時計は80年近く止まっていたとみられるが、シチズン時計が本社の一角に開設しているシチズンミュージアムの坂巻靖之初代館長、髙橋隆之現館長が修復した。同社の社名は、東京市長時代の後藤が市民・開拓者の意味を込めて名付けた懐中時計「シチズン」が由来。同ミュージアムと同館も展示、広報などで協力体制があったことが幸いし、今年3月27日に再び針が動き始めた。

 これを機に柱時計はビッグベンの名で知られるロンドンの大時計を手掛けた英国デント社製と判明。製造年代は不明だが、麻布の後藤邸は1922年に地鎮祭が行われた記録があり、後藤が初めて暮らした洋式住宅だったという。

 同館ではソニーからの連絡で初めて時計の存在を知った。新収蔵資料展「『アメリカ農園』と『ゆかりの人々』」を開催中で、時計はその目玉となっている。中村淑子学芸調査員は「館内が静かな日はカチッ、カチッという音が響く。時代の流れを静かに見てきた時計がまた動きだした」と思いをはせる。

 同展は6月9日まで。大型連休中は開館しその後、7、8の両日に休館。通常は月曜休館。問い合わせは同館=0197(25)7870=へ。

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