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県立美術館 心動かす風景版画 歌川広重企画展 150点余り 魅力紹介【岩手】

「東海道五拾三次之内庄野白雨」(保永堂版)

 江戸後期の浮世絵師・歌川広重(1797―1858年)の風景版画を集めた県立美術館の企画展「広重―雨、雪、夜風景版画の魅力をひもとく」が、盛岡市本宮の同館で始まった。広重の代表作である保永堂版「東海道五拾三次之内」の全作品をはじめ主要な風景版画150点余りの見どころを紹介し、広重作品の魅力を伝えている。

 保永堂版東海道は、33カ所の宿場と出発点の日本橋、終着点の京都を描いた計55点。同展を監修した国際浮世絵学会常任理事の神谷浩さんによると、広重は「旅の版画家」などと言われることがあるが実際は旅をほとんどせず、絵入りの名所地誌などから図を引用し、名所そのものを描くのではなく季節や天候、時間帯、人事を組み合わせた設定をすることで、見る人の心を動かす作品に仕上げているという。

 広重作品鑑賞のポイントは▽雨や雪、霧、風など天候の別▽夜や朝、月など時刻の別▽季節の別▽あからさまに描かない人物表現―の四つ。例えば同じ雨でも、暗い色調で黒雲垂れ込める夏の夕暮れの情景を表した「庄野白雨」は、突然の夕立と吹き荒れる風に木々がたわみ、坂道を駆け出す蓑(みの)やかさを被った人々がスピード感を与える。「土山春之雨」は繊細な墨線でそぼ降る雨を表し、かっぱとすげがさで雨をしのぐ後ろ姿の大名行列からは雨が降っても旅を続けなければならないため息が漏れ聞こえてくるようだ。

 保永堂版のほか、20種類以上ある広重の東海道絵揃物から隷書版など9種類の東海道絵を数点ずつ展示。中山道の宿場を描いた「木曽海道六拾九次之内」、街道絵以外の名所絵もある。

 同館初の浮世絵展開催を記念して広重晩年の名シリーズ「名所江戸百景」から「亀戸梅屋舗」などゴッホが模写した10点も特別展示。神谷さんは「自分の目で描かれているものを確認し、広重作品の面白さを感じてほしい」と話す。

 企画展は来月15日まで。開館は午前9時30分~午後6時。月曜休館。

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