北上・西和賀

注目集める「過疎先進地」 交通弱者を住民が支援 NPO法人くちない 県内外から視察相次ぐ【北上】

公共交通の在り方と交通弱者の支援は全国的な課題。住民がドライバーとして協力し、地域住民の移動を手助けする口内町の有償旅客運送

 山あいの小さな集落で活動する北上市口内町のNPO法人くちない(菅野豊志理事長)に、県内外の団体から視察が相次いでいる。2017~18年度の2年間に42団体、420人以上が訪れて取り組みを学んだ。人口1500人を切る高齢化と過疎化が同時に進行する地域にあって、公助に頼り切りにならず「自助」と「共助」の精神で地域を支える「過疎先進地」の取り組みが注目を集めている。

支援に立ち上がる地域住民

 口内町は31平方キロメートルの面積に550世帯、1450人が暮らす中山間地域。コメやリンゴの生産が盛んな典型的な農村で、高齢化率は46%(4月現在)と2人に1人が高齢者という状況にある。

 同法人は、交通弱者の支援をはじめ高齢者の日常生活維持に向けた住民主体で地域課題の解決に取り組もうと09年3月設立。自家用有償旅客運送と呼ばれる自家用車を使った有償ボランティア輸送システムや買い物支援のための商店運営、草刈りや除雪など高齢者の生活支援、特産品の開発・販売、スクールバスの運行受託など多彩な事業を展開している。

視察続々 足の確保は地域共通の課題

 取り組みを学ぼうと訪れる自治体や議会、地域づくり団体などによる視察がここ数年増え、17年度は21団体、225人、18年度は21団体、199人が訪れた。県内はじめ東北地方が中心で、遠くは静岡県からの来訪もある。

 背景にあるのは電車や路線バスの撤退などで、車を持たない交通弱者の支援に頭を悩ませる地域が増えているため。公共交通の在り方は住民の生活維持に直結する重要な課題で、交通空白地で独自の対策に取り組んでいる口内町の取り組みは足の確保に頭を悩ませている地域にヒントを提供している。

 視察した団体からは「住みよい地域づくりのため主体的に取り組んでいる話に刺激を受けた」「地域公共交通の検討の参考にさせてもらう」「住民自らが立ち上がって地区の課題や住民の悩みに対し、赤字覚悟で取り組む姿に感銘を受けた」など住民主体で地域課題の解決に挑む姿勢に反響が多い。

住民がドライバーとして活躍 利用者は年々増加

 口内町の有償旅客運送は、路線バスの見直しに伴い地域住民がNPO法人を設立し10年7月、ドライバー役を務める住民が自家用車を活用して利用者を目的地まで送迎する取り組みをスタートさせた。現在は農家や主婦、サラリーマン退職者、理容師などの平均年齢60才の住民9人が、空き時間を利用しドライバー役を務める共助の精神を生かす仕組みだ。

 町内に限って行き先を自由に指定できる過疎地有償運送と、支援や介護などが必要な人を病院や公共施設に送り届ける福祉有償運送の2タイプを運用。利用は登録制で、利用者は年々増加し、18年度は加入する60世帯の延べ1565人が利用した。

 一見すると統一性や関連性が薄いように見えるが、その理由は人口減少や高齢化が急速に進む地域で起こるさまざまな困り事への対応といういや応ない必要性への対応から生じている。

momottoメモ

◆過疎先進地の未来 カギはできそうなことを無理なく

口内町の自家用有償旅客運送の仕組み

自宅からバス停や地区交流センターなどの地域拠点までの町内発着運行が基本。バスが運行しない土日に限り、自宅から市街地の指定場所まで送迎できる。会員制は世帯年会費として1000円を納め、利用1回につき100円支払う。9月現在の登録者は60世帯(82人)。また、福祉有償運送は、要支援・要介護認定者などを対象に自宅から市内の病院や市役所、金融機関などへ送迎する。1回当たりの料金は、8キロ未満が800円、8~12キロが1000円、12キロ以上が1200円。9月現在で53人が登録している。

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