一関・平泉

地元らしさを全国区へ 磐乃井酒造

佐藤竜矢さん(34) 大学卒業後、都内で営業職のサラリーマンをした後、2013年に帰郷し磐乃井酒造入社。19年11月から専務取締役。杜氏として3シーズン目の造りに励んでいる。

 「磐乃井」「真心」、冬季限定「しぼりたて」、そして「百磐」。大正期に住民の出資で設立され、家業ではなく“まちの企業”として営まれてきた磐乃井酒造に、営業として入社し、酒造りを学び、杜氏(醸造責任者)になったのが佐藤竜矢さん。営業もこなす杜氏が蔵に新風を吹き込んでいる。

 Uターンを機に入社し、最初の仕事は首都圏への売り込み。飲むのは好きだったが、地酒専門店に営業に行ってもうまく説明できず、「自分で造った物なら伝えられる」と社長に頼み込んで蔵に入った。肉体労働の多い昔ながらの蔵で体を動かし、南部杜氏協会や県工業技術センターの講習会では頭脳をフル回転。「杜氏を任された1年目は緊張したけれど、ずっと飲んでくれている地元の人が喜んでくれてホッとしました」。

 営業しながら痛感したのは「これからは県外の地酒専門店に扱ってもらえるブランドが必要」ということ。そこで、創業100周年に合わせて立ち上げた新銘柄「百磐」を、限定流通商品として育てることにした。近所のスーパーには並ばず蔵での直売もしないが、県内外の酒販店が置いてくれるようになり、関西方面から「うちでも扱いたい」というオファーが来るように。「最初に営業先で言われた批評やアドバイスの意味が今なら理解できる」と佐藤さん。「今やっていることをブラッシュアップしてさらに質を高めたい。そして自分の飲みたい味を出していければ」とさらなる成長を誓う。

飲んでほしい1本 百磐 純米酒 火入
上燗も心地よい、百磐定番の「赤」

(720㎖・1265円、1.8ℓ・2530円)

 岩手の酒米、酵母、麹菌にこだわった百磐はぎんおとめ・精米歩合65%の赤、55%の黄、吟ぎんが・50%の橙、夏向け商品の青の4ラベル。最初は緑ラベルを出すなど変遷もあった中、赤は百磐立ち上げ当初からの定番で、ブランドの基準として大切な存在。味は甘みもあってすっきりとキレもある、食事に合わせやすいタイプ。上燗もおすすめ。

磐乃井酒造
住/一関市花泉町涌津字舘72
電/0191・82・2100

momottoメモ

地酒を醸す酒蔵では今、若手の活躍が目立っています。体にしみる日本酒が一層おいしくなる季節。伝統を守り、チャレンジを続ける若き蔵元と杜氏を紹介します。

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