奥州・金ケ崎

疫病退散アマビエに願う 存在感ある愛らしさ 南部鉄玉を通販 及富【奥州】

及富が通信販売しているアマビエの南部鉄玉

 新型コロナウイルスが世界的に流行する中、奥州市水沢羽田町宝生の南部鉄器製造販売「及富」(及川一郎代表取締役社長)は妖怪アマビエの南部鉄玉を通信販売している。豊作や疫病を予言するという妖怪で、感染拡大の中で注目を集めているモチーフ。「今の困難な状況の中、南部鉄器を通じてできることを」との同社の思いを受け、人気が広がっている。

 アマビエは江戸時代、現在の熊本県の海に現れた妖怪。見た人に豊作と疫病を告げ、自らの姿を描き写して多くの人に見せるよう伝えたという。騒ぎは瓦版に取り上げられ、江戸にまで伝わった。この話は新型コロナウイルスの感染拡大で再び話題に上り、アマビエは感染防止の啓発やウイルス退散を願うシンボルと目されるようになった。

 アマビエの南部鉄玉は高さ5センチ、幅・奥行き各2・5センチで、約160グラム。瓦版の絵を基に原型を手掛けた同社のアートディレクター菊地海人さん(36)は「親しみを持てる愛らしさと、大きさの制約の中でも存在感が出るよう心掛けた」と造形のポイントを語る。置物のほか、湯沸かしの際に水に入れて鉄分補給を補助する鉄玉としての使い方もある。

 サイズと通信販売は、感染拡大防止の工夫。ポストなどに投函できる大きさにすることで、配達業者と購入者の直接的な接触を減らせるよう配慮した。

 既に国内外から5000件以上の発注を受け、購入希望は9割が女性という。地元からの問い合わせも増え、事務所内には発送を待つたくさんのアマビエが並んでいる。

 商品化のきっかけはインターネット交流サイト(SNS)。アマビエが題材の工芸品などを作って投稿する取り組みに菊地さんが参加し、制作工程から紹介したところ、「予約したい」などの声が殺到した。試作品のつもりだったが、「要望を頂いたので、届けられるように作っていかなくては」と決めた。

 同社は商品の多くがインバウンド(訪日外国人旅行者)や輸出向けだったため、世界的に感染拡大の兆しが見えた2月の時点で大きく需要を失う苦境に見舞われている。注文には社員の健康を気遣う応援のメッセージが添えられたこともあり、菊地さんは「ここまで気に入ってもらえる物になるとは想像以上だった。鉄器で人を元気づけられる取り組みとして始めたが、むしろ元気をもらった」と感謝を口にした。

 1体1800円(税込み)で、国内送料無料。主に同社のオンラインショップを通じて購入できる。問い合わせは同社=0197(25)8511=へ。

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