江刺ゆかりの陶器紹介 郷土文化館 岩谷堂焼など97点【奥州】
奥州市江刺岩谷堂字小名丸のえさし郷土文化館は、テーマ展「岩谷堂焼」を開催している。同館に寄託・収蔵されている物を中心に97点を紹介。江戸・明治期の江刺地域における陶器生産の歴史を伝える貴重な資料が、来館者の関心を集めている。29日まで。
同館によると、岩谷堂焼は1881(明治14)年ごろ京都出身の雲林院伊左阿弥が盛岡勧業場焼で就業後、岩谷堂片岡の正重寺住職の世話で焼きだした陶器で、手びねりと型物があり、器の底辺または腰の部分に、丸に「楽」の印款がある。昭和初期まで約50年にわたり操業したが、現存する作品は少ないという。
江刺地域内外にもこの時期には各地に窯があり、大量生産による安価品が広まっていく近代より以前の時期には、地域に流通する日用雑器として用いられていた。今回のテーマ展は、雅趣に富んだ貴重な作品の鑑賞機会として、2018年に同館に寄託を受けた個人所有品の岩谷堂焼などを中心に展示している。
器の底に小さな穴があって、手でふさいで飲み干さないと置くことができない座興杯「可杯(べくはい)」、懐石料理で煮物や蒸し物など温かい料理を入れるための「蓋向付(ふたむこうづけ)」など岩谷堂焼の作品に加え、1829(文政12)年の服部焼(現在の同市江刺南町)の水甕(みずがめ)、柏原窯(現在の同市江刺稲瀬)の素焼片、窯道具などさまざまな江刺ゆかりの陶器が並ぶ。
同館では「江戸後期、明治前半に岩谷堂で焼き物が焼かれていたことを知ってもらえれば」と呼び掛ける。展示時間は午前9時から午後4時まで。問い合わせは同館=0197(31)1600=へ。