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地熱の力ってすごい! 親子deわくわく見学会、晩秋の八幡平へ

松川地熱発電所のPR施設「松川地熱館」前で説明を聞く参加者。左奥の高い建物が冷却塔

 日本で最初の商用地熱発電所として半世紀余りにわたって発電を続けている東北自然エネルギー(東北電力グループ)の「松川地熱発電所」。そして、発電所から供給される温水を利用したビニールハウスで農業に取り組む「八幡平スマートファーム」。岩手日日新聞社が主催した「親子deわくわく見学会」が11月7日に開催され、参加者は秋深まりゆく八幡平市内をバスで巡り、地熱エネルギーについて学んだ。

 一関、奥州、花巻、盛岡の各市から小学生と保護者22人が参加。車窓から雪を頂いた岩手山などを眺めながら目的地へ向かった。

▲アルパカの赤ちゃん。餌やりをして触れ合った

 最初に訪れたのは、食と癒やしの空間「サラダファームヴィレッジ」。参加者は園内を散策し、アルパカやウサギなど動物との触れ合いを楽しんだ。

 昼食で八幡平の美味を満喫した後は学習タイム。松川地熱発電所に向かう道中では、同行した東北電力岩手支店の社員が国内のエネルギー事情を説明した。

 岩手県には環境に優しく、国産の貴重なエネルギー資源である地熱や風力などの再生可能エネルギーが豊富にあることを紹介。一方で、日本全体で見た場合、エネルギー自給率はわずか1割程度しかなく、多くのエネルギー資源を輸入に頼っている現状について説明。電気の安定供給やコストの低減、二酸化炭素削減を実現するためには、火力、原子力、再生可能エネルギーなどの長所、短所を踏まえ、さまざまな発電方法を組み合わせていく必要性があると語った。

▲映像を見て地熱発電の仕組みを学ぶ参加者。調査、掘削、建設に10年をかけた発電所竣工までの記録も紹介された

 発電所のPR施設「松川地熱館」では、参加者が2グループに分かれて地熱発電の仕組みや発電所の歴史に関する映像を観賞。この中では、温泉開発を目的としたボーリング調査で蒸気が見つかった経緯が紹介され、調査のため1960年に最初に掘った井戸が噴気する瞬間を捉えた貴重映像などが関心を集めた。

 松川地域は高温の蒸気がたまりやすいのが特徴で、地下にたまった蒸気を井戸から取り出し、蒸気の力でタービンを回し発電している。屋外では高さ46メートルの煙突状の冷却塔を望むことができ、自然の風を利用して発電に使用した蒸気を冷却する仕組みなどについて説明を受けた。

 発電所の蒸気や、蒸気でつくった温水の一部は、地元の温泉や農業用ハウスで利用されている。

▲収穫したバジルを袋詰めする参加者

 次の目的地は、温水を暖房に利用し、最先端の農業に挑む「八幡平スマートファーム」。同社は高齢化による離農で使われていないビニールハウスを活用し、地熱とIoT(モノのインターネット)制御システムを組み合わせた新たな農業の確立を目指しており、現在は南国で育つバジルの通年出荷に取り組んでいる。一行はここで温度や湿度を自動管理する方法や設備などについて学んだ。

 プロジェクトの担当者は「地熱を使えるのはこの地域ならではの強み。きつい、もうからないといったこれまでの農業のイメージを変え、若い人の就農を増やしていきたい」と説明。収量増のため縦型の水耕栽培装置を使って育てたバジルは、約2週間で収穫することができる。摘み取りを体験した参加者は「ピザを作って食べたい」などと笑顔を見せた。

 見学を終え、神崎康祐君(奥州市立水沢南小学校4年)は「マグマの熱を使って発電する仕組みが分かった」と話し、自然エネルギーに興味を持った様子。温泉が好きで八幡平をよく訪れるという吉田百さん(47)=花巻市=は「発電所を間近に見ることで開発に携わった先人の苦労を知り、岩手の自然の豊かさも実感した。普段の暮らしで当たり前にある電気だが、次の世代にエネルギー資源を受け渡すため大切に使っていきたい」と話した。

地熱発電の仕組み

 地熱発電は、火山帯の地下にたまった天然の蒸気に向けて井戸を掘り、取り出した蒸気の力でタービンを回して電気をつくる。地球内部のマグマの熱でつくられた蒸気を利用して発電するため、二酸化炭素排出量が極めて少ないクリーンな国産エネルギーとなっている。

10月8日は地熱発電の日
▲保存・展示されている「主弁」。この主弁で井戸から取り出す蒸気の量を調整している

 2016年9月、国内初の商用地熱発電所である松川地熱発電所が50周年を迎えることにちなみ、運転開始日の10月8日が「地熱発電の日」に制定された。

 日本の再生可能エネルギー活用の先駆けとして、地熱特有の技術課題を克服し、安定して発電を続けてきたことが評価され、日本機械学会の「機械遺産」にも認定されている。

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