花巻

胸打つ妹との絆 新潟の高校授業教材に、生徒から鑑賞文届く 伊藤さん製作「永訣の朝」朗読CD【花巻】

新潟商高の生徒が書いた「永訣の朝」の鑑賞文を読む伊藤さん

 花巻市上根子の伊藤諒子さん(75)が製作した宮沢賢治作品の朗読CDが、新潟県立新潟商業高校の国語の授業で教材として使われ、生徒から伊藤さんに感謝や感動を伝える鑑賞文が届いた。岩手の方言を交えた「永訣(えいけつ)の朝」から賢治と妹の絆を感じたことなどがつづられ、伊藤さんは「自分の朗読が生徒の心を動かすきっかけになったとしたらうれしい」と語る。

 同校の藤原裕子教諭(53)が、岩手日日新聞社のインターネットサイトで伊藤さんが朗読集CD「まことの愛そしてさいはひ・宮沢賢治方言作品朗読集」を作った記事を目にし、2年生の現代文の授業で活用しようと1月に問い合わせ購入した。

 授業後に伊藤さんの元に届いた鑑賞文は102人分で、「自分も兄弟を大事にしたい」「祖母の話し方に似ていた」「朗読を聞く間は教室の雰囲気が変わった」「賢治の気持ちをくみ取ったような朗読をありがとうございました」「方言で聞くことで言葉が胸に迫った」など感想はさまざま。「とし子は自分の死後、賢治が後悔しないようにと話し掛けている。賢治もそれに気付き、真っすぐに生きていくことを決心する。温かな兄弟愛を感じた」など掘り下げた考察もあった。

 作中に4度出てくる「あめゆじゅとてちてけんじゃ」の読み方を場面ごとに変化させたことに気付いた生徒や、伊藤さんの朗読表現に感銘を受けたことをA4判2枚の長文につづった演劇部員もいたという。

 伊藤さんは1週間以上かけて全ての鑑賞文を何度も読み込んだ。詩の真意を捉えていると感じた箇所や、共感した箇所に赤線を引き、1枚ずつに「文字で表していない部分までしっかりと読み取っていて感心した」などのコメントを添えて同校に返却。「百人百様。若者だからこそ感じたものもあると思う。読み取る力、聞く力は社会人に必要なこと。先生の教えはずっと残る。素晴らしい授業に使ってもらえた」と喜ぶ。

 藤原教諭は「どう読んでいいか分からず笑ってしまうような雰囲気にはしたくなかったので、作品の背景などを共有した上で、実際のアクセントで学ぶことにした。言葉に込められた思いや人間性などを含めて作品に向き合うことができて良かった」と話していた。

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