北上・西和賀

老舗酒蔵復活誓い 震災、大雪で工場損壊 CF呼び掛け 喜久盛【北上】

4月に屋根の一部をふき替えたものの「全体の修復はこれから」と話す藤村社長

 北上市で唯一の酒蔵である喜久盛酒造(藤村卓也代表取締役社長)は、東日本大震災やこの冬の大雪などで損壊した工場を修復するため、クラウドファンディング(CF)による寄付を呼び掛けている。自然災害に加え新型コロナウイルスの感染拡大による売り上げ減少が続く中、創業127年の由緒ある酒蔵を存続させるため、藤村社長は「やりたいことはいろいろある。早く修復してアイデアを実現するための売り上げを確保したい」と奮闘している。

 同社は1894(明治27)年に創業。代表銘柄である「喜久盛」「鬼剣舞」のほか、愛飲者から“タクドラ”で親しまれる「タクシードライバー」や、「電氣菩薩(でんきぼさつ)」などユニークなネーミングとラベルデザインの日本酒で、全国に多くのファンがいる。

 ところが、東日本大震災で同市更木地内の工場が甚大な被害を受け、さらに、その後の地震、大雪などの影響で屋根部分が崩落したり、古い土蔵の壁が剥がれたりして生産できない状態が続いている。現在は、花巻市内にあった酒蔵を借りて酒造りから瓶詰めまでを行い、辛うじて使える本社工場の一角で貯蔵と出荷作業をしている。

 先代の父親が急逝し、2003年に5代目蔵元となった藤村社長は「大震災から10年たち、復旧、復興が終わったように報じられるが、弊社のように3・11を引きずっているところもあることを知ってほしい」と語る。

 工場の建て直しも考えたが、明治時代の土蔵に増築を繰り返した建物は解体撤去費用だけでも莫大(ばくだい)。一日も早く施設を修復して創業地に製造拠点を移したいとの思いから、4月にCFで寄付を呼び掛けた。目標額1000万円に対し、今月19日現在、全国から320万円が集まり、支援者のコメントには「三陸から応援しています」「熊本も地震や水害が続きましたがお互い頑張りましょう」など温かいメッセージが寄せられている。

 CFはウェブサイト「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」で6月19日まで受け付けている。1口5000円から5万円までで、CF用に作ったオリジナルTシャツやポケット付き帆前掛けなどの返礼品(リターン)を用意している。

 藤村社長は「使いたいコメ、作りたい酒はいくらでもある。正直、今は先が見えない状態だが、何年かかっても本社蔵を復活させ、3代目が提唱した『鑑評会の先生に評価される酒よりも、焼鳥屋の親父(おやじ)に好まれる酒』づくりを続けていきたい。CFでの多くの支援をお願いしたい」と話している。

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