北上・西和賀

絵画修復 間近に 参加者、認識新た 作業見学会 利根山美術館記念事業【北上】

利根山光人記念美術館で開かれた絵画修復作業見学会

 北上市立花の利根山光人記念美術館は5月29日、絵画修復作業見学会を開いた。絵画愛好者ら市民は専門家による修復作業の様子を間近に見学したほか、絵画修復の考え方や手法などについて説明を受け美術作品への認識を新たにした。

 絵画の修復は、利根山光人の生誕100年と同館開館25周年記念事業の一環として2021年に初めて実施。土師(はぜ)絵画工房(東京都杉並区)を主宰する絵画修復家・土師広さんが、利根山画伯の「日輪“80」「集“78」を4日間かけて修復した。今回は同画伯のいずれも1976年制作の油彩「律動」(100号)と「原始“76」(200号)の修復作業を行った。

 見学会は美術作品への関心を高めてもらおうというもので、2回目の今回は市民ら約30人が参加した。土師さんはスライドを使ったり、実際に修復作業を行ったりして分かりやすく解説。以前は「壊れたら直せばいい」という考え方だったが、近年はオリジナルを尊重し最小限の修復にとどめる保存修復が主流という。

 修復の原則として土師さんは、▽オリジナルのものとは違う素材で修復する▽オリジナル部分には変更を加えない▽50年後100年後のために修復の記録を残す―の3点を挙げた。

 絵画作品には絵の具の剥落、カビ、経年による汚れ、キャンバスの亀裂などさまざまなトラブルがあり、修復する際は、対象の作品が何の絵の具で描かれ、キャンバスは何でできているのかなど詳細に分析することから始まるという。

 絵の具の剥がれはシリコンシートの上からこてで温めて固着させ、剥落した部分は白い充填(じゅうてん)剤を入れた上で補彩。カビなどは綿棒で丁寧に取り除く。亀裂はテープではなく、糸を1本1本膠(にかわ)で貼り付けるブリッジ処理をする。

 土師さんがアンモニア水を含ませた綿棒でこすると、灰色に見えていた絵の具が鮮やかな黒色になり、参加者は「こんなにカビが付いていたのか」「見慣れているから気付かなかった」などと驚きの声を上げていた。

 土師さんは「修復によって作品の印象や解釈が変わってしまうこともある。何が正解か分からないが、常に“良い修復とは何か”を考えながら作業をしている」と語っていた。

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