北上・西和賀

芸能まつりへの業績紹介 故加藤俊夫さん遺文集出版 みちのく民芸企画【北上】

みちのく民芸企画から出版された「まつりの立役者 加藤俊夫遺文集」

 北上市で開かれている「北上・みちのく芸能まつり」で長年中心的な役割を担い、国内有数の民俗芸能フェスティバルに育て上げた故加藤俊夫さん(1931~2005年)の遺文集「まつりの立役者」が出版された。60年の歴史を刻む同まつりの企画や演出などに携ってきた加藤さんの業績や魅力を伝える一冊として注目を集めている。

 出版したのは、同市相去町の「みちのく民芸企画」(加藤英雄代表取締役)。同社は加藤さんによって1980年に設立された民俗芸能や伝承文学などを扱う出版社で、タウン誌「街・きたかみ」や雑誌「ダ・ダ・スコ」の発行も行っていたが、加藤さんの死後は休眠状態にあった。

 今回の出版は、加藤さんの娘婿で2021年3月に国学院大教授を定年退官した加藤代表取締役(71)が「遺文集発刊を機にみちのく民芸企画の復活を図り、余生の地と決めた北上に受け入れてもらうこと」を意図して企画した。

 本書は「民俗芸能」「民謡」「市民会館、市役所時代」「みちのく芸能まつり」「北上川、『艜(ひらた)』、私事」の5章から構成されており、序文は加藤さんと親交のあった斎藤彰吾さんが寄せている。編集に当たっては、人物の全貌を捉えることを主眼に、加藤さん本人が実名で発表したもの、未発表の原稿などから選択して収録したという。

 「民謡」の項では、「昔行われた農作業は殆ど失われ、当時を想像することさえ難しくなっている。…民謡は歴史の証言者であり、お年寄りが経験した生活を知らない若い連中に知らせる絶好の教材ともいえる」とし、沢内甚句などの歌詞について深い考察が展開され興味深い内容となっている。

 「みちのく芸能まつり」の項では、「一番の目的は観光と、民俗芸能の保存・伝承です。…北上市の百三十三の団体の八割が『みちのく芸能まつり』をした後に、復活しているのです」とイベントの意義を語っている。一方で「民俗芸能がわかっている人、理解している人がプランナーにならなければいけない」「北上市は独特な町で、よそから来ている人が多い。…ですから芸能に対して関心を持っている人は、半分もいない」と、今後について憂慮する一面も示している。

 加藤代表取締役は「長く祭りと関わり、眠っていた芸能をよみがえらせたことは、大きな功績だと思う。ジャーナリストとしての側面がある一方、学者の視線で祭りを捉え直すということもした人。『解説』については非常にプライベートな部分もあるが、加藤俊夫の全体像が見えてくるはず。本書がどんな風に読まれるのか楽しみ」と語る。

 自らも編者として携った、加藤さんの長女ゆりいかさんも「何もここまであからさまにしないでもとの思いはあるが、亡き父に真摯(しんし)に向き合ってくれた」と、夫の加藤代表取締役の労をねぎらった。

 本書はブックスさんわ(同市本通り、ツインモールプラザ内)、展勝地レストハウス(同市立花)などで扱っている。1冊2700円(税別)。

 問い合わせは、みちのく民芸企画=0197(62)7222=へ。

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