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「生の芸術」 オフィスに彩り

「生の芸術」を取り入れた会社関係者とアーティストの皆さん(北上市内)
北良(北上)、地元アーティストを支援

 企業などの受け付けロビーや応接室、会議室に飾られた絵画。風景や人物、抽象とさまざまな作品を目にするが、実は、その1枚1枚に来客への「おもてなし」や経営理念の発信、労働環境向上といった意味が込められている。医療用ガスやLPガスなどを扱う北上市和賀町後藤の北良(笠井健代表取締役社長)ではこのほど、花巻市星が丘のるんびにい美術館に所属するアーティストの作品を社内2カ所に設置。美術教育や画壇とは無縁の独創的な「生(き)の芸術(アール・ブリュット)」がオフィス空間に彩りを添えている。【デジタル編集部】

 知的障害のあるアーティスト・高橋南さん、佐々木早苗さんの作品を応接室兼ミーティングルーム2部屋にそれぞれ設置。各部屋のレイアウトに合わせて原画の複製をアレンジし、県産木材で額装した。額縁の製作・施工は小友木材店(花巻市花城町)。来客用に作家や同美術館を紹介するカードも置いた。設置作品にちなんで各部屋の名称を「MINAMI」「SANAE」にするなど、社内外から関心を集める工夫も見られる。

 27日のお披露目では、笠井社長と高橋さん、佐々木さん、それに同美術館アートディレクターの板垣崇志さん、障害者支援施設ルンビニー苑(同市石鳥谷町中寺林)の多田寿子副苑長、作品を仲介・販売したヘラルボニー(同市東宮野目)の松田文登代表取締役副社長が各部屋で仕上がりを確認し、記念撮影。板垣さんは「作品が展示されたり、商品化されたりすることへのアーティストの反応は十人十色だが、このような『つながり』をポジティブに捉え、自己肯定感が高まっている」と感謝した。

 作品の販売額の一部は、ヘラルボニーからアーティストに直接支払われる。福祉、アートを結ぶビジネス展開で注目される同社の松田副社長は「企業の参画によって、知的障害のあるアーティストの新しい収益構造が実現する。アーティスト自身の思いや、美術館の考えも大切にしながら事業を拡げていきたい」と抱負を述べた。

 作品や取り組みに対する評判も上々といい、北良の笠井社長は「地域貢献の形はいろいろ。弱いものを助けるという意識ではなく、1人のアーティストとしての社会参加をお手伝いしたい。アート作品を購入するだけで終わらずに、工業と障害者、地域をつなげるインターフェース(接点)になれたらいいと思う」と話している。

momottoメモ

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