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古道「キン坂」萩荘 名前の由来 考え巡らし

「キン坂」を下る萩荘長寿大学の受講生。落ち葉を踏みしめ、古道の風情を楽しむ

 一関市萩荘に「キン坂」と呼ばれる古道がある。そんな話を萩荘市民センターの職員から聞いた。「近坂」か、それとも「急坂」がなまったのか、はたまた「金坂」「均坂」「禁坂」かもしれない。正式な名称は不明というところにも古い歴史や地元住民の親しみが感じられ、興味をかきたてられた。同センターが開設している高齢者学級「萩荘長寿大学」のウオーキング講座でキン坂を歩くと知り、同行した。

 講座は4月20日に開かれ、受講生ら39人が参加した。山道ということで足元は長靴。下川台公民館前で準備運動し、和やかに出発した。

 歩き始めて程なく、穐葉神社の鳥居が現れた。足を止め、小学生の頃にキン坂を歩いて通学していた佐々木芳雄さん(75)の思い出話に耳を傾ける。「川台の人たちが町場まで行くには距離があったが、ここを通れば2分の1」などと教わり、昔の近道だったから「近坂」が名前の由来なのかなと考えを巡らせた。

 引き続き林の中、落ち葉を踏みしめながら上り坂を進む。同センターの千葉和行所長によってあらかじめ架けられたアルミ製の橋を渡り、倒木の間をくぐり抜け、イノシシの泥浴び場と見られるぬかるみを越えると、峠の広場に到着した。

 休憩中に長泉寺の小岩素彦住職(64)が「子どもの頃、卵を譲っていただきに行くため、ここを通った」などとキン坂の思い出話を披露。地元住民の生活道路としての役割を実感できた。

 峠の先は、いよいよ「キン坂」。下り坂だが、進行方向の逆から見れば上り坂で、「急坂」と捉えることもできそうな傾斜ぶりだ。健脚ぞろいの受講生に後れを取らないよう、写真を撮りながら少しずつ下った。

 直線距離にすれば2キロ弱だが、難所もあって歩きがいのあるコースだった。講座に毎年参加している千葉昌子さん(同市萩荘字下モ下釜)が「軽いと思っていたけれど、実際に歩いてみたら2キロ以上あった気がする」と息を弾ませて語るのを聞き、うなずいた。

 後日、同センターの小野寺聖悦副所長に、キン坂を講座で取り上げるまでの経緯を尋ねてみた。「3月に一関・平泉黄金の國バルーンクラブの練習会で熱気球に乗った時、うわさに聞いていたキン坂が上空から見えた。下見に行ってみたら笹やぶが生い茂っていたので、所長らと3人で刈り払って歩けるようにした」とのこと。

 古道が復活した陰には地元に愛着を持ち、魅力の発掘に汗を流す人たちがいた。(報道部・千葉順子)