文化審 倉沢人形歌舞伎(花巻・東和) 国選択無形民俗文化財へ
文化審議会(佐藤信会長)は8日、花巻市東和町に伝承される県指定無形民俗文化財の倉沢人形歌舞伎を「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択するよう宮田亮平文化庁長官に答申した。選択されれば県内で20件目、同市内では6件目となる。
国選択無形民俗文化財は、文化庁長官が国指定重要無形民俗文化財以外の無形民俗文化財のうち、特に必要があるものを選択するもの。選択された文化財は調査や記録作成、公開などが進められる。
倉沢人形歌舞伎は、同市東和町倉沢に伝わる。全国各地に分布する人形芝居の中でも歌舞伎を人形で演じる希少性があり、人形遣いが歌舞伎の演技演出を習得し、各役のせりふを担当する点も特徴とされる。倉沢生まれの菅野常次郎が1894(明治27)年に創始したとされ、菅野家の旧宅を改装した伝承館で行われる定期公演は毎年、県内外から多くのファンを集めている。

伝統継承を担う保存会員は14人。定期公演のほか、各地の催しなどに招かれることもあり、本番前を中心に週1回ペースで練習を重ねる。母と子の愛情を描く「傾城阿波の鳴門巡礼歌の段」など8演目を伝承。保存会の菊池峰雄副代表(62)は「会員はお互い切磋琢磨(せっさたくま)し、伝えられてきたことを高望みせず、普通にやってきた。これからも肩肘張らずに今まで通りに取り組む。今後は保存会に若い人を迎え、技術を伝えていきたい」と語る。
正式選択を機に調査や記録作成が行われることで、国指定など次のステップへの期待も高まる。市文化財課の平野克則課長は「選択を受けたことをうれしく思う。調査などを保存会としっかり行い、後世に伝承していきたい。(調査で)出てきた情報の発信にも努め、国指定などを後押ししたい」と話している。