日日草

2018年6月19日

 6月に入って北上市内の里山からホタルの便りが届いた。明滅するほのかな明かりは幻想的で、昭和生まれの田舎育ち者を童心にタイムスリップさせてくれる

▼小学生だった昭和50年代、ホタル研究に熱心に取り組んでいた母校の元校長先生が毎年学習会を開催してくれた。正直当時は関心が薄く、帰りに持たされるおやつを楽しみにしながら水路から湧き出る無数の明かりを眺めた記憶がある

▼ホタルはコミュニケーションの手段として発光し、人間は幻想的な現象だと感じて観賞を楽しむ。発光現象は反応を触媒するルシフェラーゼと呼ばれる酵素タンパク質と発光の基となるルシフェリンという物質が反応することで生じることが知られている

▼専門家によると、化学農薬や用排水路の改修などが影響して激減した時期があるとみられているが、現代では影響の少ない農薬や環境への配慮などにより、県内ではほぼ全域にゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタルの3種が生息しているという

▼生物調査を仕事にする岩手蟲(むし)の会会員の伊達功さんから「最近ホタルを見ない」という地域で調査に当たった際、生息していたケースがたびたびあったという話を聞いた。車で移動することが多く、歩く機会の少なくなった現代人が身近な存在に気付きにくくなったためではないかと推し量る

▼進学や就職で田舎を離れた人たちの中で、故郷を想起できる思い出を持っている人は幸せだ。家族や地域が心に残る宝を伝えてくれたからに違いない。いまさらながら、筆者の心に宝の種をまいてくれた元校長先生に感謝したい。