日日草

2017年11月22日

 昨年暮れ、アウシュヴィッツを生き延びた101歳のポーランド人女性による回想記「強制収容所のバイオリニスト」(新日本出版社)が出版され、反響を呼んでいる。翻訳はポーランド児童文学翻訳家で金ケ崎町在住の田村和子さん

▼作者のヘレナ・ドゥニチᅵニヴィンスカさんは1915年生まれ。43年にアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所に収容された。楽器の素養があったことから、囚人で構成される音楽隊員となり、演奏することを強いられた

▼演奏は囚人たちの娯楽のためなどではない。苛烈な労働へ向かう人々や、ガス室に入ることになった囚人のために明るい曲を演奏させられていた。全ては強制収容所の円滑な運営のために行われていた。戦争は音楽をも兵器にしてしまうものかと戦慄(せんりつ)を覚える

▼田村さんは、ポーランドでの生活を通して同国の文化や人々に魅せられ、クラクフ教育大で児童文学を学んだ。著書に「生きのびる-クラクフとユダヤ人」(草の根出版会)、「ワルシャワの日本人形」(岩波ジュニア新書)などがある

▼「バイオリンがなかったら、生きのびることはできなかった」。戦後、沈黙し続け命を懸けて記したヘレナさんの“警告”を人々はどのように受け止めたか。本日付7面で特集しているので、ご一読願いたい

▼今年9月、沖縄県読谷村にある集団自決が起きた自然壕(ごう)「チビチリガマ」の遺品が、少年4人に壊されるという事件があった。どんなに悲惨な戦争でも記憶は薄らいでいく。田村さんは、だからこそ「何より若い人たちにこの本を読んでもらいたい」と願っている。