「岩手の大地と共に」 岩手大創立70周年 岩渕学長、発展へ決意
岩手大(岩渕明学長)が創立70周年を迎え、記念式典が19日、盛岡市上田3丁目の同大で開かれた。岩渕学長は「本学の強みである地域との強い連携を通して地域創生を達成するためにグローカルな視点による教育、研究を継続し、岩手の大地と共に常に社会に対応した大学であり続ける」と、10年後の創立80周年を見据え同大発展への決意を述べた。
式典には文部科学省高等教育局国立大学法人支援課の後藤教至企画官、復興庁岩手復興局の内田幸雄局長、千葉茂樹副知事ら来賓を含め関係者約600人が出席。感謝状の贈呈や創立70周年記念歌「虹の翼」の演奏などが行われた。
同大は1876年設立の盛岡師範学校を起源とし、盛岡高等農林学校や盛岡工業専門学校を統合・継承し1945年に新制大学として発足。現在は農、理工、人文社会科、教育の4学部と五つの大学院研究科から成り、卒業生・修了生は約7万4000人を数える。
特にこの10年は高い専門性と幅広い視野を持つ人材育成を目標に地域連携や産学官連携に重点を置き、釜石市や陸前高田市に研究所やサテライトキャンパスを開設して水産業や東日本大震災の復興活動に力を注いできた。
同日は式典に先立ち同大卒業生で第158回芥川賞受賞作家の若竹千佐子さんが記念講演したほか、教育・研究・社会貢献活動について意見交換する岩渕学長と卒業生・修了生との懇談会なども行われた。
また同大図書館では震災の復興支援活動について写真や映像を交えて振り返る「岩手大ミュージアム特別企画展」が開会中(11月15日まで)。来月14、15日には同大などで海外協定大学のトップを招き、「グローカル人材」の育成や国際的な学術交流の継続・促進について議論する国際シンポジウムが行われる。

遠野市出身で岩手大教育学部を卒業し、デビュー作「おらおらでひとりいぐも」で第158回芥川賞を受賞した作家若竹千佐子さん。記念講演では自らの経験を基に「自分の考えを正しいと思ったら絶対に周りがどう思おうと主張することが男であれ女であれ大切なこと。自分のことを決定する権利は自分が持っているということを皆が一人ひとり持つことが(人として)強くなれるのではないか」と訴えた。
若竹さんは「おらはおらにしたがう~自己決定権を持つ生き方~」をテーマに、同学部教授の今野日出晴氏との対談形式で、幼少や学生時代のエピソード、今後の執筆活動、大学や教育への期待などを話した。
大学卒業後は臨時教員として働きながら教員採用試験を受けたが毎年不合格。その後も挫折感が拭えなかった経験を振り返り、「今だから言えるが、そこから私は出発した気がする」と述べ、周りの期待に応える人生は必要ないと考えられるようになったことを紹介した。
教育については「今が最終形ではなく、経験を積み重ねて人間は大きく変わっていく。今の自分を卑下(ひげ)することなくじっくり時間をかけて自分を育てることが大事だと思う」と述べ、性急に成果を求めるのではなく時間をかけて醸成されるものだとした。