岩手へのかえり方を一緒に探すプロジェクトKAERU 県U・Iターンフェア報告
岩手にU・Iターンして働きたい人と県内企業の出会いの場として、ふるさといわて定住財団が主催する「岩手県U・Iターンフェア」。2月8日に東京都の御茶ノ水ソラシティで開かれたフェアには県内の63社が参加し、来場した学生や一般求職者と面談を行った。並行してトークセッションも行われたフェアの様子を報告する。
Uターンを考える現役世代にとって最大の関心事が仕事。岩手の企業を知り、意思決定の材料として役立ててもらおうと企画された「セキララ☆トークセッション」では、企業の採用担当者と経営者が働き方や給与などについて本音で語り合った。
題して「いわての採用基準? 私のキャリアは岩手でどう活きるのか」。本県出身者ら12人が参加した中、小田島組、小岩井農牧、キオクシア岩手、イーストライズ、岩手ホテルアンドリゾートの5社が、それぞれに特徴ある事業内容を紹介しながら仕事にまつわる疑問に答えた。
各社では幅広く人材を求めており、専門的な知識、技能よりも素直さや前向きな姿勢を重視するという意見も。キャリア採用を担当する岩手ホテルアンドリゾートの本田大介さんは「岩手が好きという人は地域をよく知っていて、仕事を通じた地域への貢献意欲も高い。結果として在職期間も長くなる」と指摘した。
企業側のメッセージを踏まえ、次に切り込んだのは待遇の問題。進行役の佐藤柊平さん(いわて圏代表理事)が「とはいえ、岩手は給料低いですよね?」と話を振ったのに対し、小田島組の小田島直樹社長は「土木工事で業績を伸ばし、年収1千万円の社員もいる。ほどほどの人生でいいという考えではなく、頑張って働き、見合う給料を自分から要求できる人を求めたい」と語った。
佐藤さんは「地方には仕事がないというイメージがあるかもしれないが、顕在化していないニーズは多い」とし、「話の続きは、ぜひ企業ブースで」と個別面談を促した。

続いてのトークセッションは、進学や就職で首都圏に出てきている長男、長女を悩ます問題がテーマ。「岩手に帰るか、帰らないか座談会」と題し、ゲストに学生の三浦健寿さん(23)=盛岡市出身=、社会人の木村拓哉さん(25)=同=、神尾慶子さん(25)=奥州市出身=を迎えた。
田畑の維持管理、結婚など後継ぎとして抱える悩みは人それぞれ。「帰ってきてほしい」という父母らの期待もある中で、「都会暮らしに慣れた身としては交通の不便さが心配だ」「スキルを身に付けて、いずれは岩手に帰りたい」などと語り合った。
企業との面談後押し
スタンプを4個集めると、岩手への新幹線チケットが当たるかも―。フェアへの来場者を増やすべく、新たに企画されたのがスタンプラリー抽選会。企業と面談するつどスタンプが1個もらえる仕組みで、岩手出身の学生や社会人のほか、新聞紙面を通じて県内に暮らす親向けにもイベントの周知を図った。

U・Iターンフェアは東京都内で年2回開催しているが、昨年7月の前回フェアの来場者が33人にとどまったため、今回は100人を目標にてこ入れ。大台には乗らなかったものの、就職活動を控えた学生やUターンを検討する社会人、地域おこし協力隊への応募を考えている人など73人が来場した。
製造、情報通信、医療・福祉、農林業など幅広い業種が参加した会場では、プロのMCによる企業インタビューが行われ、業務内容について具体的に紹介。資料コーナーには会社案内やU・Iターン関連の冊子などが並べられ、企業側から閲覧する来場者に積極的に声掛けし、ブースでの面談につなげた。
新幹線のチケットは、県内の企業訪問や就職イベント参加での利用を想定したもの。東京―盛岡間の往復が3人、片道が6人に当たるとあって、半数超の来場者がイベント終了後の抽選会まで残った。景品には岩手の特産品も多数用意され、じゃんけん大会を交えて盛り上がりを見せた。
次回のU・Iターンフェアは11月8日に東京交通会館で開催予定。ふるさといわて定住財団の髙橋誠専務理事兼事務局長は「県内企業が人材確保に苦慮する中、フェアの来場者は減少傾向にあり、集客が課題になっている。新しい試みで一定の成果があったので、来年度も周知方法を工夫し、親からの伝達に期待して地元での発信も継続していきたい」としている。

職員採用や移住支援施策、地域おこし協力隊の募集などを紹介する市町村コーナーで異彩を放ったのが久慈市。「急募!!久慈市で社長・経営者になってみませんか」というパネルを掲げ、意欲あるU・Iターン人材の流入に期待した。
従来は、久慈で働きたい人や暮らしたい人向けの応援パンフレットを主体にまちの魅力を紹介していたが、「いまひとつアピールに欠ける」と考え、U・Iターン者呼び込みの策として発案。背景には後継者がいない事業所が市内の約6割に上る深刻な状況があり、市と久慈商工会議所で支援に乗り出しているという。
「後継者や右腕として事業経営しながら久慈で一旗あげてみませんか」。こう記したパネルでは、希望に合う事業所の紹介など円滑な事業承継に向けた支援体制を説明。市企業立地港湾課主査の大内田博樹さんは「多くの企業が熱意ある人を必要としている。いきなり経営者になるのではなく、パート勤務で収入を得ながら必要なスキルを身に付けていくなど多様なライフスタイルを提案したい」と話した。
3月は、県内でも就職関連イベントが予定されている。求人企業が一堂に会する機会で、19日は岩手県南、宮城県北の57社が集まる「中東北就職ガイダンスin一関」が一関市のなのはなプラザで、20日は181社が参加する「いわて就職マッチングフェアⅡ」が滝沢市の岩手産業文化センターで開催される。