史跡「人文知」の断片 近藤氏価値語る 全国整備市町村協大会開幕・平泉
第57回全国史跡整備市町村協議会大会(同協議会主催)は5日、平泉町を主会場に3日間の日程で開幕した。初日は町立平泉小学校体育館で開会式と総会が開かれたほか、平泉文化遺産センター名誉館長で元文化庁長官の近藤誠一氏による講演会が行われ、史跡の価値を考えた。
講演会には全国各地から訪れた大会参加者のほか、一般聴講者合わせて約400人が来場。「ふるさとの魅力~史跡に蓄積された人文知~」と題して講演した近藤氏は、人類が直面する深刻な問題として▽温暖化による異常気象の加速▽新型コロナウイルス感染の世界的拡大▽ロシアによるウクライナ侵攻など国際秩序の不安定化―を挙げ、これらに共通する問題の解決には人類が蓄積してきた自然科学や人文学、古典、芸術などの英知を総動員した「人文知」が必要とした。
史跡の価値については衣川柵(奥州市)や石見銀山(島根県)などの具体例を示し、「史跡には古代以来の自然現象や人の思想、行動、情熱、希望、挫折、工夫など先人たちが苦労の末成し遂げた人文知の断片が散りばめられている。そこから解決のヒントが得られるのでは」と語った。
同協議会は史跡や名勝、天然記念物、重要文化的景観がある全国の市町村が加盟し、史跡の整備や保存に関する調査研究などの取り組みを通して文化財の保存や活用を進めるため活動。関係する県内15市町で組織する実行委員会が主管する今大会では5日夜に一関市で情報交換会を開催したほか6、7の両日はエクスカーション(視察研修)として4グループに分かれて県内の史跡などを訪れる。
同町では2011年に大会を予定していたが東日本大震災のため延期。「平泉の文化遺産」の世界文化遺産登録10周年記念として予定された21年の大会も新型コロナ感染拡大の影響で再延期していた。