「風流踊」無形文化遺産へ 北上と奥州「鬼剣舞」 ユネスコ評価機関登録勧告
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関は、北上市と奥州市で伝承されている国指定重要無形民俗文化財「鬼剣舞」を含む全国41件の民俗芸能「風流踊(ふりゅうおどり)」について、ユネスコ無形文化遺産に「登録」を勧告した。文化庁が1日発表した。11月28~12月3日、モロッコの首都ラバトで開かれるユネスコの第17回政府間委員会で登録が決まる見通し。正式に決まれば本県では4件目の無形文化遺産登録となり、今後の民俗芸能継承、発展に向け大きな弾みになりそうだ。【3、9面に関連】
文化庁の発表によると登録が勧告されたのは、岩崎鬼剣舞保存会、滑田鬼剣舞保存会(以上北上市)、朴ノ木沢念仏剣舞保存会、川西大念仏剣舞保存会(以上奥州市)で構成する鬼剣舞連合保存会の「鬼剣舞」のほか、「永井の大念仏剣舞」(盛岡市)など全国24都府県、42市町村の41件。
風流踊の起源は中世に由来。衣装や持ち物に趣向を凝らし笛や太鼓などではやし立て、にぎやかに踊ることで災厄を払って死者を供養し、安寧な暮らしを願う共通の特徴を持つ。祭礼や年中行事などで地域の人々が世代を超えて参加し、各地域の歴史と風土を反映し多彩に継承されている。
鬼剣舞の起源は約1300年前にさかのぼり、山伏・役行者が天下泰平、五穀豊穣(ほうじょう)などを願い舞った念仏剣舞が始まりとされる。その後、戦の出陣・凱旋(がいせん)の際に踊られたのが広く世に伝わったという。いかめしい面を付けて踊るが、鬼ではなく仏の化身で、面には角がないのが特徴だ。
政府は「風流踊」をまとめて一つの遺産と見なして2020年にユネスコに登録申請したが、登録件数の多い日本の審査が先送りされたため、21年に再提案。今回、無形文化遺産保護条約政府間委員会の評価機関で、「登録」の勧告が出された。
登録が決定すれば、本県の無形文化遺産は花巻市大迫町の「早池峰神楽」(09年)、大船渡市三陸町のスネカなどを含む「来訪神 仮面・仮装の神々」(18年)、二戸市の日本うるし掻(か)き技術保存会の漆生産・精製技術を含む「伝統建築工匠(たくみ)の技」(20年)と合わせ4件になる。