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日本農業遺産認定 一関、奥州、平泉3市町 6年越し結実 束稲山麓地域

セレモニーでくす玉を割り、日本農業遺産認定を喜ぶ(右から)石川一関市副市長、青木平泉町長、髙橋県南局副局長、佐藤奥州市農林部長

 農林水産省は17日、伝統的な農業や生態系保護などに取り組む地域を対象とした日本農業遺産に一関市舞川、奥州市前沢生母、平泉町長島にまたがる地域で構成する「束稲山麓地域の災害リスク分散型土地利用システム」を認定したと発表した。国連食糧農業機関に世界農業遺産認定を申請する対象には選ばれなかったものの、申請団体となる束稲山麓地域世界農業遺産認定推進協議会(会長・青木幸保平泉町長)が2016年から取り組んできた成果が2度の落選を経て6年越しでようやく実った。

 日本農業遺産認定の知らせを受け同協議会は同日、平泉町役場で認定セレモニーを開催。会長の青木町長をはじめ一関市の石川隆明副市長、奥州市の佐藤浩光農林部長、県南広域振興局の髙橋浩進副局長兼農政部長の4人がくす玉を割ると、詰め掛けた関係者らから拍手が湧き起こった。

 青木町長は「関係する2市1町や県、地域の皆さんが知恵を絞って取り組んできた結果であり感謝している。新たな活力がこの地域はもとより、岩手を発信できるエネルギーとなるよう邁進(まいしん)していく」あいさつ。世界農業遺産認定への挑戦については「今回の結果をしっかり精査し、検討していきたい」とした。

 日本農業遺産に認定されたシステムの特徴は、肥沃(ひよく)な土壌だが洪水害に見舞われる低平地と、水害はないものの干ばつや土砂崩れの恐れがある山麓地を分散所有し異なる作物を組み合わせることで、自然災害リスク低減の工夫が行われてきた点。現在も低平地でコメを中心とした商品作物、山麓地では野菜や果物、肉用牛飼育、漆の里づくりなどが続けられているほか、分散所有は共同・共助の精神を礎に地域全体に継承され、伝統文化や人間の生活と共生する動植物の生態系維持、優れた景観の保全などにも広く及んでいる。

 同協議会委員で専門家による現地調査にも立ち会った丸山安四さん(88)=同町長島字小戸=は「農業を取り巻く厳しい状況が続く中、認定は地域にとって誇りとなる明るい材料。今後を担う若い世代には自信を持って新たな挑戦に向かってほしい」と語った。

 同協議会では18年度に初めて提出した申請書が1次審査を通らず、20年度の再挑戦では日本農業遺産認定と世界農業遺産申請を決める2次審査に進んだものの落選。3度目の挑戦となる今回は、22年8月の1次審査通過、10月の現地調査を経て12月19日に都内で最終2次審査に臨んでいた。

 日本農業遺産の認定証授与式は、3月1日に農水省で行われる予定。

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