植物研究の先人紹介 早池峰山採集資料も 市総合文化財センター企画展【花巻】
高山植物の宝庫として知られる早池峰山の植物研究の礎を築いた先人たちを取り上げた企画展「早池峰の花を紹介した人々―早池峰植物研究小史―」が、12日まで花巻市大迫町の市総合文化財センターで開かれている。先人が採集した貴重な標本など資料124点を集め、早池峰山の植物研究に関わった先人の足跡を紹介している。
早池峰山の植物研究は、幕末に来日したロシア人植物研究者カール・ヨハン・マキシモヴィッチ(1827~91年)と、マキシモヴィッチの指導を受け植物採集を行った紫波町出身の須川長之助(1842~1925年)に始まる。外国人のため国内を自由に歩くことを許されなかったマキシモヴィッチは、須川に採集を頼み、横浜や長崎を拠点に3年間研究を続けた。須川はマキシモヴィッチ帰国後も研究を支援し、早池峰山固有の「ヒメコザクラ」「ナンブトウウチソウ」「ミヤマヤマブキショウマ」の発表につながった。
その後は、近代植物分類学者の牧野富太郎(1862~1957年)が、1903(明治36)年に地元研究者らの採集品を基に「ナンブトラノオ」「コバノツメクサ」「ナンブイヌナズナ」、05(同38)年には自ら早池峰山に登り発見し命名した「カトウハコベ」などを発表した。展示資料からは多くの研究者により貴重な高山植物が明らかにされていったことなどが分かる。
また、27(昭和2)年の天然記念物保存にかかる調査に同行した花巻小学校長で植物研究をしていた杉村松之助(1874~1948年)、大迫町立山岳博物館の学芸員を務め「早池峰の植物」の刊行にも携わった玉川七郎(1914~88年)らのことも紹介。同センターの吉田宗平学芸調査員は「早池峰山の植物一つ一つの名前の背景には多く研究の積み重ね、人と人とのつながりがある。地方から全国に広がる研究者同士のつながりをたどることができる」と話す。
企画展は4章構成で、1章では早池峰の信仰と歴史、2章ではドイツ人地質学者で日本地質学の基礎を築いたハインリッヒ・エドムント・ナウマン(1854~1927年)らの調査を基に地質からみる早池峰山の特徴にもスポットを当てている。