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本県側原状回復宣言 教訓「次代に生かせ」 青森・岩手産廃不法投棄事件

青森・岩手県境不法投棄事件からの原状回復を達増知事(右から2人目)に報告する齋藤委員長(同3人目)ら

 1999年に発覚した青森・岩手県境の産業廃棄物不法投棄事件で、専門家らで組織する県の原状回復対策協議会(委員長・齋藤徳美岩手大名誉教授)は、本県側の廃棄物の撤去や土壌浄化などが完了したことから原状回復宣言を出した。委員は14日、県庁を訪れて達増拓也知事に報告。事件の教訓を次の地域づくりに生かすよう求めた。

 事件現場は、二戸市と青森県田子町にまたがる土地。99年11月に始まった岩手、青森両県警の合同捜査により、青森県の処理業者らが27ヘクタールに約150万トンの産業廃棄物を不法投棄していたことが発覚した。

 本県側は、同市の16ヘクタールに35万トンの不法投棄があった。2000年に廃棄物処理法に基づく原状回復命令が出されたが、原因者の破産などで措置命令が履行不能となったため、02年に県が行政代執行により原状回復事業に着手。03年に学識経験者、地元住民らで組織する同協議会を設置し、不法投棄廃棄物の撤去や汚染土壌・地下水対策などに取り組んできた。14年に不法投棄廃棄物を全量撤去し、22年には土壌や地下水汚染の浄化などが完了。今月4日に「原状回復宣言」を発出した。

 14日は齋藤委員長ら3人が県庁を訪問。達増知事に原状回復宣言までの経緯を報告し、同宣言の文書を手渡した。達増知事は「協議会の提言を踏まえ、事案の教訓を学んで次の世代に伝え、地域の環境を守っていく取り組みを進めていきたい」と述べた。

 原状回復に伴い同協議会は解散するが、不法投棄された跡地の利活用や事件の教訓伝承などの課題が残されていることから、今後は地元住民らによる新たな協議・検討の場が設けられる。齋藤委員長は「時間はかかったが、撤去や浄化が完了したことにほっとしている」としつつも、「この事件は便利な暮らしのつけ。教訓を生かさなければ(原状回復までにかかった)250億円の税金、20年の年月は無に帰す」と語った。

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