磐井川聖観音像を選定 台風水害復興の象徴 国土地理院・自然災害伝承碑【一関】
1947、48年のカスリン、アイオン両台風による犠牲者を弔うために一関市の磐井川堤防山目側に設置され、「磐井川聖観音像」の名で親しまれる水害復興記念像が、国土地理院の自然災害伝承碑に選定された。市内では5件目の選定で、管理する磐井川聖観音奉賛会ではさらなる防災意識高揚に向けて誓いを新たにしている。
自然災害伝承碑は、東日本大震災や数々の台風被害など、全国的に自然災害が増えていることを踏まえ、過去の災害教訓を伝えるために建立された伝承碑を地図にまとめて掲載、発信することで、住民の防災意識向上と郷土を襲った災害の歴史を確認してもらおうと、2019年に選定、掲載を開始。今年3月には磐井川聖観音像を含む53件が追加選定されて計1874件となった。市内ではカスリン、アイオン両台風の水位表示3件と、08年の岩手・宮城内陸地震で損壊した旧祭畤大橋などについて紹介する祭畤被災地展望の丘に続き5件目となる。
磐井川聖観音像は水害から10年となった1958年に、犠牲者573人の冥福を祈り市民の苦闘の歴史を後世に伝えるため、復興の象徴として地元住民や彫刻家の協力で建立された。高さ約2・5メートルの銅製で、磐井川左岸の上の橋と磐井橋の中間にあり、堤防改修工事に伴い一時撤去されたが、東日本大震災級の大地震にも耐えられるように耐震補強が施された上で2016年に元の位置に戻された。
管理する奉賛会では、かつては磐井川を横断するこいのぼりを掲揚していたほか、9月には例祭を開くなど伝承活動を続けており、神崎浩之会長は「聖観音は、常にカスリン、アイオン両台風の災害を忘れず、防災都市一関を目指して平和なまちづくりを誓う象徴。像を眺めることで、防災意識を高めてもらいたい」と語っている。