県内外

H2A打ち上げ成功 月面探査機など搭載 種子島

小型月面探査機「SLIM」などを搭載し、打ち上げられたH2Aロケット47号機=7日午前、鹿児島・種子島宇宙センター

 三菱重工業は7日午前8時42分、日本初の月面着陸を目指す小型月面探査機「SLIM(スリム)」などを搭載したH2Aロケット47号機を鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げた。探査機とX線天文衛星「XRISM(クリズム)」は約48分後までにそれぞれ予定軌道に投入され、打ち上げは成功した。いずれも正常に機能しているという。

 後継の新型ロケット「H3」1号機が3月に失敗して以降、大型機の打ち上げは初めてで、成否が注目されていた。同社で打ち上げ責任者を務める徳永建・宇宙事業部技師長は同日午後に記者会見し「H3失敗後の打ち上げで、緊張感とプレッシャーを感じてきた。無事に成功し、本当にほっとしている」と述べた。

 47号機の打ち上げは5月ごろの計画だったが、H3失敗を受け宇宙航空研究開発機構(JAXA)などは共通部品への影響を調査。対策を施した上で8月26日に予定していたものの、天候が整わず3回先送りされていた。

 SLIMは高さ約2・4メートル、重さ約200キロの探査機。着陸目標地点は月の表側、赤道近くの「神酒の海」にある小さなクレーターで、打ち上げ後3~4カ月で月周回軌道に到達し、年明け以降の着陸を計画している。

 これまでの月着陸機は数キロ~十数キロの誤差があったが、SLIMは100メートル以内のピンポイント着陸を狙う。取得データは、人類の月面再着陸を目指す米国主導の「アルテミス計画」でも活用される見通し。

 XRISMは、銀河団の形成過程解明などに向け、宇宙にある高温ガスを観測する衛星。2016年の打ち上げ直後に破損して運用を断念したX線天文衛星「ひとみ」の後継機の位置付けだ。

 国産ロケットを巡ってはH3が3月、第2段エンジンに着火せず失敗。7月には新型固体燃料ロケット「イプシロンS」のエンジン試験中に爆発が起きるなど深刻なトラブルが相次いでいた。

響くごう音、鳴りやまぬ拍手

 種子島宇宙センターの発射台から約6キロの長谷展望公園では7日、SLIMなどを載せたH2A・47号機の打ち上げを約800人が見守った。ごう音とともにオレンジに光る機体が青空へと打ち上げられると園内は拍手と歓声に包まれ、カメラを手にしたファンらは白煙が残る空を見詰めた。

 レンタカー内に泊まって朝を迎えた東京都立大2年の佐藤匠さん=横浜市=は「バリバリと音が鳴り、迫力があった。すごいの一言」と喜びをかみしめた。

 直前で中止となった8月28日も見物に訪れたという岐阜県各務原市の大学4年杉山ひかるさん(22)は「ロケットが分離するところが見え、光がすごい。前回は打ち上がらず心配したが、本当に来て良かった」と満足げ。発射の瞬間「わあー」と大きな歓声を上げた島内に住む小学5年長尾晴樹君(10)は「間近で飛んでいくロケットが見られて感動した」と興奮した様子だった。【時事】

地域の記事をもっと読む

県内外
2025年5月11日付
県内外
2025年5月11日付
県内外
2025年5月11日付
県内外
2025年5月11日付