岩手日日紙齢3万号記念 証言集「戦後70年―忘ルベカラズ―」

 戦後70年の節目を迎えた2015年、「岩手日日」で1年間にわたって展開した企画特集を再編集し、証言集として出版しました。本文より証言の抜粋、発刊に当たって、編集後記を掲載します。

1945年8月15日 太平洋戦争終結

■二十歳にも満たない青年が何の楽しみも知らないまま尊い命をささげた。そんなみじめな戦争は絶対にすべきではない。

■戦争ほど愚かで非生産的なものはない。

■戦争が「いい」と言う人なんて、誰もいない。生き物の宿命を理性で抑える。それでこそ、万物の霊長じゃないか。

■戦争中は食べる物も着る物もなかった。今はまるきり別世界。食も衣もあり過ぎて始末に困るほど。

■戦争はこの世で一番悪いこと。このくらいばかなことはない。

■あのようなつらい経験は二度としたくない。これからは国と国、民族と民族が共に手を取り合い、平和に向けて歩んでいくべきだ。

―本文より

発刊に当たって

 多くの読者や地域住民の皆さまに愛され、支えられて、日刊紙「岩手日日」は2016年5月22日に紙齢3万号を刻むことができました。創刊から実に93年余りの歳月を費やした金字塔であります。その記念事業の一つとして、15年の企画特集「戦後70年―忘ルベカラズ」を集大成し本書を発刊しました。

 語り継ぐ戦争体験者が年々少なくなる中で、「聞き取りには最後の機会。体験を活字で残すことで悲惨な戦争の記憶を次世代に引き継ごう」。「戦後70年―忘ルベカラズ」はそんな思いを込めて1年間にわたって紙面展開しました。

 2月にスタートした連載では、第1部「オクニノタメニ」、第2部「ここが戦場になった」、第3部「銃後の暮らし」、第4部「『終戦』で戦い終わらず」、そして第5部では「あすへ」をテーマに、計36人(組)の体験を紹介しました。また、8月15日の終戦記念日特集では、地域の皆様から投稿のほか、取材に協力をいただきました。

 「おい、おまえ死ぬぞ」「夜中、何百と思われる飛行機がごう音を立てて南へ飛んでいった」「戦争ほど恐ろしいものはない」―。敵機襲来におびえた少女時代、苦難の連続だったシベリア抑留、死と隣り合わせの戦地、戦勝を信じた学徒動員など、それぞれの行間には言葉を失うほどの苦悩や困難が読み取れます。

 戦争を知らない世代が国民の8割以上を占める中で、証言者一人ひとりの貴重な体験を通じ、恒久平和の尊さを改めて感じていただけたなら幸いです。

岩手日日新聞社
代表取締役社長 山岸学

編集後記

 企画構想から約2年。2015年1月1日発行の岩手日日新年特集号を皮切りに1年間にわたって展開した企画特集「戦後70年―忘ルベカラズ」を再編集し、本書としました。

 証言者は総勢63人。同じ「太平洋戦争」でありながらも、一人ひとり異なる63通りの体験が語られ、つづられています。

 このうち37人は、2月から7月まで5部建て、計36回の連載で紹介しました。岩手日日としては、これまでにない大型連載でした。戦争体験者は難なく見つけられるだろうと高をくくってスタートを切りましたが、人探しは容易ではなく、病気などを理由に断られることも。当初は「出征」「学徒動員」「空襲」「抑留」などと、漠然とテーマを考えていましたが、実際に話を聞くと“地元”が空襲を受けていなくても動員先で遭遇したなど、戦争体験が単純には分類できないことに気付かされました。

 終戦から71年目。その体験を語れる人はますます減ります。本書に掲載した中にも、残念ながら発刊の報をお届けする前に亡くなられた方もいます。

 「死ぬまでにしゃべることはしゃべって、残すものは残していかなきゃならない」(本舘登美さん)、「歴史は共有しないと思い出になり、思い出は世の移り変わりとともに消えてしまう」(伊藤正さん)、「私の体験を後々まで残すことで、子供たちに『ちょっとおかしいぞ』『戦争になるのでは』と一歩立ち止まって考える力や気持ちを持ってもらえれば」(松浦竹治さん)―。皆さんの言葉に、本書を発刊する意義を強く感じています。

 くしくも15年は安全保障関連法が成立し、戦後70年を顧みるのとは別のところで「戦争」の二文字が世論を騒がせた年でした。一方、16年は5月にオバマ米大統領が被爆地・広島を訪問し、核廃絶の道への転換点となるか注目されています。

 証言者が一様に語ったのが「戦争はすべきではない」という言葉です。現代人が「世知辛い」とする今を「幸せな時代」とも言います。

 本書が平和とは何か、幸福とは何か、今一度考えるきっかけになれば幸いです。

 最後に、本企画にご協力くださった多くの皆さまに深くお礼申し上げます。

2016年6月
岩手日日戦後70年書籍編纂委員会

momottoメモ

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