一関・平泉

羊の里を目指して㊤ 下大桑を名産地に 有志組織設立、一から手探りで【一関】

2016年に設立した下大桑ヒツジ飼育者の会

 牧羊を通して地域振興を目指すユニークな取り組みが、一関市萩荘で動き始めている。昨年発足した下大桑ヒツジ飼育者の会(桂田清会長、会員15人)。萩荘をヒツジの名産地に発展させ、一関の新たな観光スポットにしようと奮闘する会員たちの、壮大な夢を追った。(2回続き)

 下大桑地区は全34戸の集落。人口が減少し、地区内の少子高齢化が進むものの住民の結束力は高く、サツマイモの定植や米粉パン作りなどのイベントを定期的に実施して集落の活気を盛り上げている。

 2016年。住民の所得向上を図ることを目的とした新たな取り組みを模索する中で、牧畜にたどり着いた。「下大桑にはウシを育てていた人も多く、牛舎が残っている家もあるので牧畜は始めやすいと思った」と桂田会長(77)。いろいろな家畜が候補に上がったが、国内で国産ラム肉の流通が少ないことに目を付け、下大桑にヒツジの牧場を作り「国産羊肉」の産地として成長させることで思惑が一致した。

 同年6月には有志が集まり下大桑ヒツジ飼育者の会を設立した。活動母体はできたものの、会員のほとんどは牧羊に関して素人。同会事務局長の桂田勝浩さん(53)は「どこで購入すればいいのか、どう育てるのか、全てが手探りの状態だった」と苦笑する。

 協力を求めたのは、同じく牧羊に取り組む奥州市江刺区の梁川ひつじ飼育者の会だった。早速、英国原産のサフォーク種5頭を購入。さらに梁川の牧場に出向き、餌のやり方から、ヒツジの性格・習性、毛刈りまで知識と技術を身に付け、17年に入ってから新たに12頭を購入した。

 目標の飼育頭数は100頭。昨年に一関市萩荘地内に休耕田を利用して広さ約30アールの「羽根橋ヒツジ牧場」を整備すると、今年5月からは地元企業が保有する土地を借り受けてメインとなる牧場造りに着手。会員とボランティアで広さ約2ヘクタールの広大な敷地に、外周約600メートルの「山田ヒツジ牧場」を造り上げ、着々と環境づくりを進めた。

 体がある程度大きくなるまでは、会員宅の畜舎で育てた。餌やりや健康チェックの際に逃げ出さないように人間に慣れさせる必要があり、わが子を育てるように世話を続けた。すると、ヒツジたちも会員に自然と近づくようになり、愛情も一層深まった。

 会員の年齢は60~70代が大半で、牧羊には所得向上のほかに新たな生きがいづくりの創出も込められている。自宅の畜舎で2頭を育てている阿部国雄さん(68)は「おとなしいと聞いていたが、飼ってみるといろいろと大変なことも多い。それでもかわいいし、それぞれ餌に好き嫌いがあることなど、日々発見もある」と笑顔。日を重ねるごとにやりがいや充実感も生まれてきている。

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