熱いやつら疾走 大町商店街でいす―1GP 沿道から大声援【一関】
キャスターが付いた事務用椅子に乗って公道を駆け抜ける2時間耐久レース「いす―1GP一関大会」は8日、一関市の大町商店街の特設コースで開かれた。いちのせき商業まつり「福の市」の関連イベントとして開催。市内をはじめ北上、釜石両市や山形県、茨城県、神奈川県などから18~51歳の26チーム78人が出場して“愛車”で疾走し、商店街を活気づけた。
いす―1GPは、商店街の衰退に危機感を抱いた京都府京田辺市のキララ商店街によって2010年に始まった。日本事務いすレース協会によると、全国16カ所で大会が開かれている。一関大会は、地元の商店による一関銀座会などで構成するいちのせき商業まつり実行委員会が15年から開催している。
大町商店街前の路上に設けられた1周180メートルのコースを、3人一組で交代しながら休憩なしで2時間走り続けるルールで、周回数によって順位を決める。
競技スタートと同時に、沿道から声援が送られ、会場は一気にヒートアップ。他を引き離して快走するチームの一方で、時間がたつにつれて疲労からか険しい表情を浮かべる出場者も。一関の最高気温は25・3度(盛岡地方気象台調べ)と夏日になり、出場者は皆汗だくで、車輪が外れたり、勢い余って椅子ごと倒れたりするハプニングも続出した。
上位3チームが100周を超え、全国各地のいす―1GPに出場している茨城県の30代男性による「茨城の熱いヤツ 熱き魂の砦」が21キロに相当する119周で優勝。メンバーの飯野健司さん(32)は「一関のコースは路面状態が良くてスピードが出やすかった。他のいす―1GPと比べて観客が多くて活気があり、応援がとても良かった」と喜びを語った。
運営ボランティアとして集計などに携わった一関修紅高校音楽部の熊谷祐香さん(2年)は「選手の頑張りから勇気をもらい、ボランティアをやり切れた。みんなが楽しめる今回のようなイベントが一関で広がればうれしい」と話していた。
いす1―GPとの縁は切っても切れないのだろうか。大会2日前、先輩社員から「出場予定だった社員の代わりに出てくれないか」と懇願され、リベンジすることになった。2015年の第1回大会に取材しながら出場した際、正直もう出たくないと思うほど疲れたが、頼まれると断れない性分から引き受けることになった。
基本は椅子に座って後ろ向きに足でこぐだけだが、外側に向け若干傾斜がある道路で操縦の技術も求められる。周を重ねるうち、膝が笑うという言葉がしっくりくるほど足取りがおぼつかなくなった。夏日だったこともあり体力の消耗が一段と早く、汗も大量に流れた。
取材を兼ねた参加で、合間には競技の様子をカメラに収めた。普段は人通りが少ない商店街。大勢でにぎわう光景を見るのは久々で、同僚と健闘をたたえ合い、集まった人と触れ合う中で疲れは吹き飛んだ。
83周で26チーム中13位の結果は、声援があったからこそ。第2回の取材を含め大会に携わってきた縁を大切に、地域の盛り上がりに努めようと考えつつ、筋肉痛にならないことを祈るばかりだ。
(報道部・丹沢誠翔)
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