花巻温泉病院 19年3月閉院へ 岩手医大、方針示す
岩手医大(小川彰理事長)は24日、花巻市台の同大附属花巻温泉病院(一戸貞文院長、病床150)を2019年3月に閉院する方針を明らかにした。築45年の既存建物が老朽化し、耐震強度不足が指摘されているため改修費用が多額となるほか、移築も困難と判断した。同大は矢巾町に1000床の新病院を19年9月に開院予定で、同温泉病院閉院後は花巻市内の通院患者を受け入れる予定という。同大では18年3月に閉院を最終決定する見通しだ。
盛岡市内丸の同大で同日、小川理事長と一戸院長らが出席して会見を開き、閉院の方針を明らかにした。
小川理事長は閉院理由について、建物の老朽化と特殊な構造を挙げ、既存施設が川の両岸に基礎が建ち、病棟を支えている構造上の問題から「川の上に病院が建っているため現在の建築基準法では許されない。現在地での建て替えは不可能と判断した」と説明。
さらに県が3月に公表した建築物耐震改修促進法に基づく耐震診断結果で、1981年5月31日以前の旧耐震基準で不特定多数の人が利用する大規模建築物に該当する同病院は、震度6強および震度7の地震で倒壊する危険性があるとされていた。
小川理事長は「改修すれば100億から200億円程度が掛かると思われ、耐震補強ではなく移転新築が必要だが、矢巾に新病院を建設しているため非常に難しい」と閉院に至った経緯を語った。
同温泉病院は、内科と消化器内科、神経内科、リハビリテーション科など8科を開設。病床は現在50床を休床し100床で運営。2016年度の1日当たりの平均患者数は、入院70人、外来87人。花巻市全域からの利用が多い。
閉院を進めるに当たり同大では、来年4月までに病床を50床まで減らし、患者については花巻、北上両市の病院、有床診療所に協力を依頼して移すことを検討している。
一方、通院患者についても花巻市内や近隣市の病院、診療機関に診察を依頼することや、矢巾町の新病院開院後は通院してもらうことも想定している。同大では東北道矢巾パーキングエリアにスマートインターチェンジが開通するため「新病院とアクセスしやすい環境が整う」と説明した。花巻市と新病院を結ぶ交通手段についても市と十分協議していくという。
閉院の最終決定は、評議員会で異論がなければ理事会で決定する見通し。小川理事長は「新病院の開院で高度医療を県民に届けたい。物理的な要因で温泉病院の存続は難しいが、地域医療の後退ではなく再編するという考えだ」と理解を求めている。
同大では温泉病院の閉院について、花巻市民対象の説明会を後日開く予定にしている。
岩手医大附属花巻温泉病院の閉院予定が明らかになった24日、地元・花巻市では上田東一市長ら関係者が対応に追われ、患者らからはさまざまな声が上がった。
上田市長は発表を受け、「市としては花巻温泉病院の存続を要望していたが、岩手医大として苦渋の決断を行われたものと認識している」と理解を示した。その上で、同大が市内で行う住民説明会の開催を支援するとコメントした。また、「岩手医大附属の矢巾新病院には、市内医療機関と機能を分担しながら、花巻市民に対して先進的医療を提供して頂くことを期待している」などとし、今後のさらなる連携強化に期待した。
患者らからは先行きを不安視する声も聞かれた。父親の見舞いに来たという同市の40代女性は「父は入院、通院とずっとお世話になっている。なくなるのは困る」と困惑顔。同市松園町の女性(80)は「1995年から内科、整形外科に通っている。一通り診療科はそろっているし、別世界のように景色がいい病院だ」と残念そうだった。
花巻温泉病院 国立療養所花巻温泉病院の統廃合によって岩手医大が委譲を受け、1993年7月、同大附属花巻温泉病院として開院。内科や外科、リハビリテーション科など8診療科を標榜する。一般病床150。