賢治作品の樹木に光 記念館特別展 「虔十公園林」初出雑誌も【花巻】
宮沢賢治記念館の特別展「賢治と樹木」は、花巻市矢沢の同館で開かれている。賢治作品の大切な構成要素となっている植物に光を当てた企画。杉の木の公園がストーリーの中心となる童話「虔十公園林」を取り上げたほか、花巻で見ることのできる樹木の現物標本を展示し、物語世界への深い理解を促している。3月31日まで。
生前未発表だった「虔十公園林」は、障害を持つ虔十が周囲にからかわれながらも植え、育て、守り続けた杉林が、虔十の死後も子供たちの遊び場として残り続けるという話。賢治の残した手帳に「kenju Miyazawa」と書き込まれていることから、賢治が主人公に自分自身を重ね合わせ、「雨ニモマケズ」のデクノボーにつながる作品ともいわれる。
同展では、同作の自筆原稿の複製のほか、初出と考えられる雑誌「青年」(日本青年館、1939年4月刊)の現物を展示。この雑誌には「虔十の林 宮澤賢治遺稿 深澤省三畫」として掲載されており、挿絵を描いた洋画家の深澤省三(盛岡市出身)が抱いた賢治の印象や2人の関係性などにも迫っている。
同記念館の牛崎敏哉学芸員は「周りにたくさん木があった当時、木を植えて子供たちが集う場所や公園を造るという発想そのものが早過ぎると思う。その後の森林伐採、地球温暖化を考えると、作品が示唆的なものにも感じられる」と語る。
このほか、「花巻周辺の樹木たち」と銘打ち、賢治作品に登場する400種もの植物の中から付近の山林で見られるドングリやオニグルミ、トチの実などを並べ、「どんぐりと山猫」「風野又三郎」「鹿踊りのはじまり」などそれぞれのシーンと併せて紹介している。
開館時間は午前8時30分~午後5時。入館料は小中学生150円、高校生・学生250円、一般350円。
同展の連携企画展として、同市高松の宮沢賢治イーハトーブ館では3月末まで「宮沢賢治とイーハトーブの樹木たち」展を開催している。