書道、現代アートで評価 中嶋さん(北上)が公募展出品
北上市さくら通りの書家中嶋敏生さん(29)は、初開催の「アート・ショドウ・トーキョー」(4月28~30日、東京都)に出展した。中嶋さんが現代アートの公募展で審査を通過したのは初めてで、本県からは唯一の出品。新たに取り組んだアートとしての書道が一定の評価を得て、さらに創作意欲を強めている。
同展は日本初の現代アート書道専門フェアと銘打ち、Zealエデュケーショナル(本社広島市)が主催。全国から約60人が応募し、現代アートに精通した美術関係者3人の審査を経て中嶋さんを含む38人が出展権を得た。
中嶋さんが出品したのは、題名に「秒」の入ったシリーズ30点。このうち「3秒」は実際に3秒間で書かれ、「リアルな時間、リアルな人生を作品に書きたかった」と制作意図を説明する。「人生を2倍楽しめるのでは」と2本の筆でしたためたバージョンもあり、試行錯誤がうかがえる。
中嶋さんは北上市出身。県立黒沢尻北高校の書道部に所属し、岩手大教育学部芸術文化課程造形コースでも書道を学んだ。就職後も制作を続け、2016年に書家デビューしている。
当初は「作品が生活に溶け込み、読んで楽しんでもらえるのが重要」と読みやすさを追求していたが、「何となく格好良い字を書くことに限界を感じた」という。自由な現代アートの世界を知り、制作スタイルを大きく変えて同展に応募した。
展示を終え、「現代アートなので、美術史上で一度もなかった表現やコンセプトが求められる。厳しい審査を通過した38人の作品と並ぶと自分の位置付けも分かる」と強い刺激を受けたよう。10月開催予定の第2回にもエントリーしており、「審査通過のため日々書いているところ。アートとして成立し、書道としての魅力も備えた作品を増やしていきたい」と目標を語った。