一関・平泉

重厚な音心打ち チェリスト土田英順さん 厳美中で演奏、被災地の今も【一関】

国内第一人者の土田さんが厳美中を訪れて開かれたチェロコンサート

 東日本大震災の被災地や子供たちの支援活動を行っているチェリスト土田英順さん(札幌市在住)が25日、一関市厳美町の厳美中学校(鈴木利典校長、生徒数97人)を訪れ、同校と厳美小学校の児童生徒を対象にしたコンサートを開いた。厚い響きと豊かな表現力で子供たちにもなじみのある楽曲を演奏するとともに、被災地やこども食堂の現状を伝えた。

 土田さんは、日本フィルハーモニー管弦楽団、新日本フィルハーモニー管弦楽団、札幌交響楽団で首席奏者を歴任。ボストン交響楽団などでも演奏するなど、日本の第一人者。現在は札幌を拠点にソロ活動をしている。

 2012年から本県沿岸部の小中学校を回りコンサートを開いており、18年は23、24の両日に大船渡、陸前高田両市で演奏。本県でのコンサートでピアノ伴奏を務めているのは、震災当時大船渡市立赤崎中に勤務していて現在は厳美中教諭の菊池寛さん。その縁で厳美中でのコンサートが実現した。

 25日のコンサートには、厳美中全校生徒と厳美小4、5年生が出席。初めに鈴木校長が「被災地を励ましてこられた土田さんは400回のコンサートを行っています。目と耳、感性で演奏を楽しんでください」とあいさつ。続いて菊池教諭が、津波で全壊した赤崎中に土田さんが楽器を買ってくれて勇気づけられたエピソードなどを紹介した。

 土田さんは、チェロの音域の広さを紹介しながら、シューベルト、カッチーニの「アベマリア」やバッハの「G線上のアリア」、サンサーンスの「白鳥」など、クラシックの名曲を演奏し、重厚な音色を体育館に響かせた。また、チェロ一本でジブリ映画の主題曲なども弾き、音楽の幅の広さと楽しさを伝え、児童生徒を魅了していた。

 途中には、昔の子供がさまざまな事情で家族と一緒に食事できずにいた状況を話した上で、「そういう寂しい思いをしている子供が今も日本中にたくさんいるんです。子供の6人に1人が独りで食べている」と指摘。北海道や福島県でのこども食堂の取り組みを紹介し、「食堂を支えるため寄付しています。皆さんもこうしたことを覚えておいて後輩を思いやれる優しい心を持ってほしい」と語った。

 演奏後、厳美中の徳永瑠香生徒会長(3年)は「チェロの低くて深い音を生で聴けて良い体験になりました。ショパンの『ノクターン』では細かい指使いに感動しました」などと感想を話し、生徒会による募金1万円を土田さんに手渡した。

 土田さんは「小学生も中学生も熱心に聴いてくれた。シューベルトという名前で『鱒』という作品名が出てきたときにはうれしかった」と話していた。

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