奥州・金ケ崎

春子夫人の生涯たどる 斎藤實記念館で企画展【奥州】

昭和天皇即位礼で春子が着用した「桂袴」(中央)などを展示する企画展

 奥州市水沢吉小路の斎藤實記念館は、斎藤夫人の春子(1873~1971年)にスポットを当てた企画展を開いている。生家から受け継いだ薩摩気質で軍人・政治家の斎藤を支え、夫亡き後も「水沢人」となって人々に慕われた春子の生涯をたどる。30日まで。

 タイトルは「斎藤春子と水沢―薩摩おごじょが水沢名誉市民となるまで」。春子は東京生まれだが、旧薩摩藩士・仁礼家の長女で、芯の通ったしっかり者の鹿児島女性の気質を持っていた。

 華道や茶道を習い、ミッションスクールの東洋英和女学校(現東洋英和女学院)で英語を学んだ。20歳で斎藤と結婚し、44年間内助の功に徹した。二・二六事件で斎藤が凶弾に倒れた際も夫をかばって銃弾3発を受ける重傷を負った。

 45年に東京の空襲を逃れ、貨車1台分の荷物とともに斎藤の郷里・水沢に疎開。終戦後も東京には戻らず、夫の遺志を継いで水沢で暮らし、地方婦女子のかがみとして広く敬愛された。63年に水沢名誉市民章の第1号を受けた。

 会場では資料34点を展示。昭和天皇即位礼で着用した宮中祭儀用の和装礼服「桂袴(けいこ)」と檜扇(ひおうぎ)の華やかさがひときわ目を引く。和装の模様は斎藤家の家紋「丸に片喰(かたばみ)」をモチーフにした。

 らでんや銀細工の扇、かんざし、二重小箱や名刺入れなどの下賜品、愛用の革製バッグや小物入れなど海軍大臣、首相夫人として身に着けた物を含め興味深い物品が並ぶ。

 青森県での全国植樹祭に出席される昭和天皇が水沢駅を通過する際に春子が列車内の両陛下に拝謁する姿や、多くの著名人が水沢の春子を訪問した際の写真、名誉市民章も展示。ラジオ番組で収録された95歳の春子の肉声も流れる。

 同館の及川泉学芸調査員は「ファーストレディーまでされた方が身寄りもない場所で暮らすのは大変だったはず。大好きな猫に囲まれ、夫の墓守をして亡くなった後も寄り添った。展示資料から、りんとした姿を思い描いてもらえれば」と話す。

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